第2回『キリスト新聞社 聖書ラノベ新人賞』結果発表!

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第2回『キリスト新聞社 聖書ラノベ新人賞』
結  果  発  表


 

 

 

受賞作品

大賞
『神学生バトル』

 

準大賞
『ジャンヌちゃんと、わたし』

 

佳作
『俺の厨二病な従妹を無理やり救世主にしようとする件』
『天使と悪魔の聖書漫談』
『聖書ラノベ新人賞2に受かる方法、教えます』

 

全体講評

 前回に引き続き120を超える応募をいただきありがとうございました。第1回同様、すでに数多くのラノベ作品が聖書やキリスト教の天使・悪魔などのモチーフを描いている中で、〝本家本元〟である老舗出版社が採用するにあたり、どう差別化できるかという点を念頭に置いて選考しました。募集の段階で「よくある質問」にすべて「大丈夫だ、問題ない」と回答したことがちょっとした話題になりましたが、とにかく未だ「こんなこと書いたら怒られる」と思われている(思わせている)ような状況は、日本のキリスト教にとってマイナスでしかないと考えています。おかげで今回も、実に多彩な作品に出合うことができました。自らガチな信徒、牧師であることを公言されている方の応募が散見されたことも印象的でした。賞を盛り上げていただいた多くの関係者の皆様、応募者の皆様に改めて感謝申し上げます。  

 

個別の受賞作品へのコメント

大賞
神学生バトル
 架空の大学神学部を舞台に繰り広げられる「ガチンコ神学×バトル×コメディー」。難しくなりがちな神学の領域を、荒唐無稽なキャラとストーリーで飽きずに読ませてくれます。ラノベだからこそできる、学問的な「正しさ」とエンタメとしての「面白さ」を兼ね備えた作品。各階の敵を倒しながら登っていく「死亡遊戯」的展開も胸アツ。未完の作品ではありますが先々のタイトルにも魅せられ連載を決定しました。牧師の養成機関である神学部の内情などもリアルに描かれており、関係者も共感しながら読めることと思います。

 

準大賞
ジャンヌちゃんと、わたし
 ジャンヌ・ダルクを描いた作品は数多あると思いますが、「ジャンヌちゃん」とリンクしてしまった「わたし」が15世紀のフランスと21世紀の日本という二つの世界線を行き来する感じはまさにラノベ的。直接的には神もイエスも登場しませんが、聖書の引用と本編のストーリーがうまくマッチしていて、キリスト教からも離れすぎない距離感が見事でした。テーマは決して軽くないのに、不思議と読後感は爽快。

 

佳作
俺の厨二病な従妹を無理やり救世主にしようとする件

 タイトルからはありがちなラノベっぽい内容を想像してしまいますが、モーセの出エジプト記を「厨二病」らしく忠実に(?)翻訳した作品。原作のストーリーをどう現代化して表現するのか、話の先が読めるだけに興味津々で読み進められました。モーゼやアロンが実名で登場する辺りも個人的にはツボ。やはり「海割り」のシーンまで読んでみたいです。


 
佳作
天使と悪魔の聖書漫談

 『創世記』から順を追ってざっくり解説しながら物語をたどっていく、まさに「お気楽だけれどガチな聖書読本」。「神話大好きオタク」ならではの雑学ウンチク話が嫌味なく適度に盛り込まれており、「実用書向き」のトークノベルとして非常に可能性を感じさせる作品でした。作者のアシェラ様にはSNS上でも「#聖書ラノベ」タグを多用していただき、この場を借りて御礼申し上げます。

 

佳作
聖書ラノベ新人賞2に受かる方法、教えます
 本賞の企画趣旨を丁寧に分析し、「受かる方法」を具体的にアドバイスしながらそれ自体をラノベ作品にしてしまうという力量に拍手。客観的にどう見られているのかという点からも、運営側として非常に興味深く読ませていただきました。他の応募作と同じく、賞レースそのものを盛り上げてくださったことへの感謝を込めて選ばせていただきました。

 

架神恭介の選評

『神学生バトル』

感じるぜ……かなりのファック・スピリッツをよ……。

「これだけ勉強しているんだから、このくらいファックしてもいいだろう」という作者の意志を感じるぜ。

本作はかなり説明的なテキストで、下手をすると衒学的とも捉えられかねない内容だ。だが、現代の神学生がよく分からない超常現象を巻き起こしながらバトルするという前提がそもそもトンチキなので、結果としてみればそれでもバランスが取れている。どれだけまともなことを言っていて知識的に正しかろうと、拠って立つそもそもがトンチキであれば、きちんとファックであるという証左だ。

あえて難点を挙げるなら、これは教会の内部の人たちや既に知識のある人達にはキャッキャと受け入れられるだろうが、完全な一般層への訴求力となると現状ではやや怪しい。

知的好奇心を巧みにくすぐって手に取らせるような、タイトル、帯文、あらすじなどを工夫する必要があるだろうが、まあ、それは編集サイドの仕事だな。

『ジャンヌちゃんと、わたし』

女子高生がタイムスリップしてジャンヌ・ダークと出会う、というキャッチーなあらすじからはとても想像できない、鬱屈した閉塞感に満ちた、ある意味、正統派のジュブナイル作品。そして、ホラーにすら片足を突っ込んでいる。

神側からの働きかけによりヒロインに奇跡的現象が繰り返し発生し、その影響により補習に身が入らず追試に失敗し続けるという、「超常現象の結果としてもたらされる非常に個人的かつ矮小、しかし、現実的な問題」には背筋が寒くなるものがあった。奇跡的現象により人生が崩れるのはジャンヌよろしく歴史上にまま見られるものであり、狂気と奇跡は紙一重である。

神の考えは計り知れない。この「神何考えてるのか分かんない問題」は問題意識としてはヨブ記にも通じるものがあり、本作のテーマは真摯だ。一連の(あまり有り難くない)奇跡的現象に対して一応の解決がもたらされた後も、ヒロインの身辺の問題は決して改善しない点なども、ヨブ記の取ってつけたようなハッピーエンドに対するアンチテーゼとも感じられた。

概して本作は、獣のようなファック・スピリッツを隠し持った作品と言えよう。いや、テーマ的には聖書に沿っているので厳密にはファックしていない。過激な和姦プレイと言ったところだが、そこには確かにセックスの生々しさが生まれており、天井の染みを数えていても終わらない。

 

至道流星の選評

大賞作品『神学生バトル』、B級映画ばりの無理矢理感満載で押し通すキリスト教インフレバトル、なかなかよいチャレンジです。
多くの皆さんが書く小説というのは、他の賞などにも使いまわしがしていける内容に収まっているでしょう。しかし本作は、もう聖書ラノベ一本勝負のために生まれたようなもの。聖書ラノベに通らなかったらどうするんだこれは、と余計なおせっかいを感じてしまう作品ですが、作者の方が楽しんで書かれていることも伝わってくるので、大賞かどうかなど無関係に、これはこれで作品の存在だけで勝利といったところなのでしょうね。

連載しやすいバトル主体で物語が進められそうなのも、雑誌連載とは相性がよく小回りが利きます。こうした物語創作こそ、これからの時代における新しい布教の形になりえるのではないでしょうか。いや、なってほしい!
日本国内でなかなか振るわないキリスト教知識人・キリスト教文学の分野に暑苦しさ満載で押し入ってくれそうな作品です。本作の商業化が、いつまでも影響力を持つことができないキリスト教界に風穴を開けてもらえるものになればと期待します。

一つ、広く読者を取り込むための工夫としての提案です。まだ物語に読者を引き込めていない段階での最初の戦闘シーンが長いため、ここをもっとコンパクトにすることができるとレベルが高まると思われます。あるいは2000~3000字程度の、期待感をかきたてるパンチ力あるプロローグを冒頭に差し入れるだけでも代替案として有用に機能するのではないでしょうか。
問題点があるとすれば、やや説明チックなセリフが多いために事前知識が前提の玄人向け作品でもあるので、物語に引き込む前の脱落者を出さないためにも、そこを上回る一手があるとより良い展開が期待できるものと思います。

準大賞作品『ジャンヌちゃんと、わたし』はうって変わって淡々としたストーリー。
何か大きな展開があるわけでもなく、現代的な重苦しさで満たされながら淡々と進む物語は、読み終わってみればじんわり残るものがあります。ジャンヌといじめられっ子の繋がりは人間すべてに共通するものであり、今日を生きるちょっとした勇気を与えてくれる物語に仕上がっていると思います。主人公を取り巻く鬱屈した現実は最後まで変わらず、何かが解決されたわけでもないのに、自らが体験した奇妙な奇跡から繋がる些細な気づきが読後感をスッキリさせたものにしています。筆力があってこそ完成させられる作品でしょうね。

何よりも大賞作品の(良い意味での)暑苦しさと、準大賞作品の(良い意味での)息苦しさをぜひ読み比べてみてください。エンタメ好きは大賞作品から、文学好きは準大賞作品から入ってもらえると、聖書ラノベ大賞の懐の深さがわかろうかと思います。
そこからバラエティ豊かな佳作作品にも目を通していただき、第三回聖書ラノベ大賞の機会には、さらに多くの皆さまに新しいキリスト教文学を切り拓くチャレンジに参加してもらえましたらと思います。

 

キリスト新聞社より、ラノベレーベルへの意気込み

選評委員であるお二人とNOVEL DAYS様の多大なるご協力により、単発の「賑やかし」かと思われた本賞が回を重ねてしまいました。「言葉の宗教」と言われた世界宗教の一つでもあるキリスト教が、いまだ現代日本人の心には一向に刺さっていないことの責任を、勝手に感じてしまっている身として、イエスと聖書の「ぱねえ感」と無限大のポテンシャルを感じさせる賞レースでした。今回、惜しくも受賞にもれてしまった皆さまも、「二度あることは…」という古の言葉を信じて、果敢にチャレンジを続けてください。「何度応募してもいいのか」って? 「大丈夫だ、問題ない」。また近々お会いしましょう!


 

多くのご参加ありがとうございました!

次期開催にご期待ください!