第1回『聖書 × トークメーカー ライトノベル新人賞』、結果発表!

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第1回 聖書 × トークメーカー
『ライトノベル新人賞』
結  果  発  表


 

 

受賞作品

大賞
『17歳の牧師だけど何か質問ある?』

 

準大賞
『聖書RPG ~救世主と4人の天使たち~』

 

佳作
『先輩はエクソシストじゃありません!』
『ンンン、天使の試練んんん!』
『みされぽ 〜天から舞い降りた不思議な課題〜』

 

全体講評

想像を上回る数の応募をいただきありがとうございました。改めてキリスト教や聖書に対する「中二病」的関心の高さを実感することができました。受賞作の選考で特に念頭に置いたのは、すでに数多くのラノベ作品が聖書やキリスト教の天使・悪魔などのモチーフを採用している中で、〝本家本元〟である老舗出版社が後発レーベルを立ち上げるに際し、どう差別化できるかという点でした。「宗教不問、改宗不要、プロアマ不問」というざっくりとした応募資格で、自由度も高く、縛りが少ないだけに、聖書の物語そのものをラノベ化したものから、キリスト教学校を舞台にしたラノベまで、趣向を凝らした多彩な作品が寄せられたと思います。初の試みにもかかわらず、賞を盛り上げていただいた多くの関係者の皆様、応募者の皆様に改めて感謝申し上げます。ぜひ、次回以降につなげたいと願っております!

 

個別の受賞作品へのコメント

大賞
17歳の牧師だけど何か質問ある?

リアルな教会を舞台にしながら、ラノベ的なキャラ設定、ストーリー展開のミックス具合が絶妙だと感心しました。「17歳の牧師」は現実にはあり得ませんが、日本の教会文化に忠実な描写が随所に見られ「もしかして……いるかも?」と思わせてしまう説得力がありました。世代に幅のある「キリスト新聞」の読者層を想定しても、広く受け入れられやすい作品だと確信しています。テキスト作品のため、どうビジュアル化できるかも楽しみです。

 

準大賞
聖書RPG ~救世主と4人の天使たち~

ベースとなる聖書をなぞりつつ、4人の天使が織りなすドタバタ喜劇が純粋に楽しい作品。神やイエスが登場する応募作は他にもありましたが、本作の神、イエスの設定は異色で、新しいキリスト教観を構築してくれそうな予感がします。このキャラクターなら、何をやっても面白くなりそう。漢字でそろえた各章のタイトルにもお遊びがあって好きです。大賞受賞作とは毛色も異なりますが、こういう可能性もあるのかと思わされました。

 

佳作
先輩はエクソシストじゃありません!

「幽霊」「霊感」「悪魔祓い」と、およそ「正統」なキリスト教とは相容れないように思える要素をうまくちりばめ、作品として成立させている手腕はさすがです。おそらく実在の「神学部」がモデルとなっているため、リアリティも担保され、随所にマニアックな知識も出てくるのでコアな信者でも楽しめそう。ただ、オカルトが苦手という読者には入り込みにくいかも。

 

佳作
ンンン、天使の試練んんん!

期末試験に落ちた補習として、人間界でキリストの教えを実現させるという課題に取り組む「へっぽこ見習い天使の三人」が主人公。難しそうな内容を柔らかく伝えるというラノベの特性をうまく生かせている作品だと思います。ただ、話がやや拡散気味で登場人物も多いため初心者にはとっつきにくいかも……という点が気になりました。同じ主人公で、他の「課題」と展開を見てみたいと思いました。

 

佳作
みされぽ 〜天から舞い降りた不思議な課題〜

「フツーの中学生女子が教会に足を踏み入れたら」という現実にもありがちな展開を丁寧に作品化しています。「ラノベ」と呼ぶにはややオーソドックス過ぎますが、10代が読めるコンテンツとしてはこのような読み物も増えるといいなと思わされました。「教科書」的なニュアンスがやや強いので、教条的・啓蒙的な要素を少し抑えた方がより読みやすくなると思います。

 

架神恭介の選評

大賞の『17歳の牧師だけど何か質問ある?』は今回の新人賞のお題を受けながらも、まさにラノベという感じのラノベに仕上げてきており、クレバーな企画性であると感じました。ですが、そのクレバーさにより作品全体がいかにもお上品になってしまっており、ファック・スピリッツが欠乏しているとも感じました。もっとファックした方が良いのではないでしょうか?
また、「キリスト教的」「お説教的」なニュアンスが出てくると、どうしても目が滑ります。今回、出版社が「ラノベ」という形式を取ったのは、そこで読者の目を滑らせないためだと思うので、ここは演出を含め、もっと力を入れて改稿すべきでしょう。キリスト教徒にではなく一般読者に買わせるためには、この努力は必ず必要だと感じています。
併せて全体の仕掛けも、狙いは分かれども、現状は効果的に機能しているとは言い難く、これも全体的な調整が必要と思われます。個々のアイデアや構成要素は悪くないのですが、それらを魅力的に見せるためには構成の工夫と演出が必要です。
総合的に言って、企画のクレバーさ、掲載媒体との温度感、そして将来性が買われての受賞と思われます。現状のものは第一稿として作品のポテンシャルは提示できていると思いますが、書籍化の際にはさらなる推敲を重ねた姿で発売されることを期待します。

準大賞の『聖書RPG ~救世主と4人の天使たち~』は自由な設定で描かれた作品であり、主人公の女の子に執拗に脱糞させようとするなど、かなりのファック・スピリッツを感じました。
TRPGライクな展開もあって、個人的にはとても楽しい演出ではありましたが、これを今回の掲載媒体で、広い読者に向けて送るという点では多少厳しさがあることも否めません。これは作家の個性にもかかわるので、作者が「これでいいのだ」というのなら、このままで一切構いませんが、もし受賞を本気で狙う場合は考慮した方が良い問題かもしれません(商業化を狙わないのなら本当にこのままで一切構いません。素晴らしい個性です)。
なお、マリアがイエスを出産するシーンですが、主人公の少女が隣で並んで脱糞しているとビジュアル的な迫力が増したと思います。改稿する際は検討してみて下さい。

 

至道流星の選評

まず全体としては、作品のレベルが高く、予想以上の激戦になったという印象です。
タイミング次第ではプロでやれる方もいらっしゃるだろうなと感じました。実際にプロの方もご参加くださっています。

大賞作品については、文章は荒削りですが、キリスト教や教会を舞台にしたライトノベル作品としてまとまっていると思います。
一つご提案したい点があるのは、序盤の牧師になるための動機付けの部分です。巻き込まれ型、振り回され型の主人公の場合、通常ならヒロインに押し付けられてとか、そういったパターンになりますよね。本作ではこれが、両親の事故死という深刻なキッカケになっています。おそらく血まみれの両親のショッキングなはずの(?)死というのは、その後の軽快な展開のストーリーを想定すると、ライトノベル作品として馴染みずらい印象です。振り回され型の主人公の類型としては、たとえば両親(または片親)が遊び人でどこかに消えてしまったとか、借金だけ主人公に押し付けてといった、冗談交じりの展開で済ませられるお約束にしておいたほうがいいのかなと思われます。あまりに深刻な動機づけを、もっとユーモアある成り行きに転換してしまうことで、作品全体にライトノベル的な統一感が出るものと思います。

本作は、一般的な小説賞なら、一次審査の下読みを通過しない可能性が高いです。また小説家になろうさんのような、ヒットするための文法のようなものが確立されている小説投稿サイトでも、日の目を見ないと想定します。
しかし『聖書トークメーカー新人賞』は、老舗新聞社の編集者が必ずすべての投稿作品に目を通してくれるという稀有な賞です。通常の小説投稿サイトなら、予めランキング上位に入っている作品に、編集者が売上を当て込んで声をかけるものばかりでしょう。今回は、直接、編集者が全原稿にしっかり目を通してくれるという通常ではありえない機会であり、だからこそ、この度の受賞に繋がったのだろうと思います。

小説家デビューには様々な方法がありますが、とにかくネット上でのアクセス数などが重視される昨今にあって、やはり総合的に見れば、親身に受賞者と向き合ってくれるレーベルを見つけるのが業界で長くやっていける最良の方法であろうと感じます。キリスト新聞社さんは、目先のPVなどに振り回されず、クリエイターを何より大事にしてくれる版元さんです。
投稿者の方々は、こうした版元さんが主催する賞に応募したことだけでも、十分に先見の明があったように思います。

 

キリスト新聞社より、ラノベレーベルへの意気込み

つい先日、『ラノベ古事記』(KADOKAWA)著者の小野寺優さんにインタビューする機会がありました。小野寺優さんは古事記が好きすぎて、若者に何とかして伝えたいと考えた末に、あまり読んだことも書いたこともない「ラノベ」というジャンルに果敢に挑戦したといいます。今日のキリスト教出版界に決定的に欠けているのは、この熱量です。本気で誰かに何かを伝えたいと考えれば、それなりの工夫と覚悟が要るはず。しかし長年、10~20代の若者が手に取ることのできるキリスト教のコンテンツは皆無と言っていいほど貧しい状況でした。キリスト新聞社は満を持して、カードゲーム、アプリゲームの開発に着手し、今回ようやく「トークメーカー」様のご協力により、ラノベ、そして4コママンガの募集にも取り組む機会をいただきました。小野寺優さんは数ある入門書を読み漁った末、「『萌え』というものを全くわかっとらん」という結論に至ります。私たちが創刊するレーベルは、読者の求める「萌え」要素も意識しつつ、500年前の「宗教改革者」に倣い、新しいチャレンジを続けていきたいと考えています。引き続き応援のほどよろしくお願いいたします。
http://www.kirishin.com/2017/12/18/10262/

 


 

多くのご参加ありがとうございました!

次期開催にご期待ください!