セリフランキング

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    やっちゃったことは、済んだことだ。くよくよしても、仕方ない。どぉ~やって、生き延びるかを、考えよう!
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    「東インド映像」といえば最近は日本の特撮関係者を高給で引き抜いているそうですね。この間、ニュースに取り上げられていました。特撮関係者はカレー好きが多いらしく、インドに行けるのはそれだけで魅力的に映るようです。そういえば戦隊もののイエローにはカレーのイメージがつきまとう。
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    「そぉらそらあ! もっと腰に力を入れなきゃあ!」 「チッ!」  頭に靄《もや》の掛かる中、イスラは必死になって夢見のトトゥの攻撃を凌いでいた。  振り下ろされる金色の嘴を受け流し、防御姿勢から直接攻撃へと派生させる。だが、その動きは舌打ちしたくなるほど鈍かった。 「丸見えええ!」  金の嘴が左肩に刺さる。 「貧弱ゥ!」  蹴りを受け止めるが、踏ん張れない。たたらを踏みながら下がりつつ、懐から取り出したナイフを投擲する。  ナイフはトトゥの左肩に突き立ったが、敵は微塵も怯まない。拙《まず》い手だったとイスラは思った。相手は痛みも感じないほどキマっているのだから、みすみす武器を一つくれてやったようなものだ。 「ハ、ハハ、ハ。ずいぶんボケてるようだねえ。んん?」  案の定、トトゥは引き抜いたナイフを手の中で弄びながら、余裕の表情を向けてくる。 「闇渡りってのは、どいつもこいつも落ち着きが無いからねえ。すぐに薬がまわって夢見心地だ。そうなったやつをサッパリ逝かせてあげるって、結構慈悲深いよねえ」 「……」  鬱陶しい野郎だ、とイスラは思った。今すぐ喉を引き裂いて、声帯を引っこ抜いてやりたい。 (おいおい……)  イスラはかぶりを振った。  どうにも苛立っている。あまり情け深い性格ではないが、かと言って癇癪持ちでもない、それが自分のはずだ、と言い聞かせる。 (血が上り過ぎてるってンなら……)  イスラは剣の柄尻で、己の頭を殴りつけた。  一度ではなく、二度も三度も繰り返し、痛みが脳髄の奥に届くまで殴り続ける。 「い、イスラ!?」...
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    48|作品名闇渡りのイスラと蒼炎の御子作者inoue_kazuki

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     突き出された剣を切り払ったイスラは、返す刀で黒衣の敵に斬撃を浴びせかけた。だが、相手の構えた小盾によって防がれ、表面にわずかに傷を作るに留まった。  そんな攻防を、かれこれ十回近くは繰り返しただろうか。  襲い掛かってきた数は五人。うち二人はカナンに任せ、イスラは残った三人を相手取っていた。すでに一人斬っており、足元には血まみれの死体が横たわっている。  不気味な相手だ、とイスラは思った。  腕前のことではない。確かに、各々が均一な技量を身に着けていて、それなりに連携もとって仕掛けてくるが、捌けないほどではなかった。  問題はその装備だ。動きやすさを優先して作られた黒い衣装に、同じく黒く塗装した胸当てをつけている。全員が同じ装備を持っていて、右手に細身の曲刀、左手には熊の掌を模した小盾を構えている。先端部に爪がついているため、武器として使うことも想定されているのだろう。  だが何よりも奇怪なのは、彼らがつけている鉄製の仮面だ。顔全体を覆うように出来ており、目と口の部分の通気口以外は完全に隠されている。全体に波打つような装飾が施されていて、全くの無表情に作られていないところが返って不気味さを助長している。  そして、彼らは一言も喋らない。  先ほどイスラが斬った一人にせよ、わずかにうめき声を漏らしただけで、意味のある言葉は一切発さなかった。それは残りの四人も同じで、腹に蹴りを喰らっても少しも怒号を発さない。何事も無かったかのように、平然と、全く同じ調子で攻撃を再開する。  仮に彼らがゴーレムの一種とすれば合点もいっただろうが、イスラの伐剣には赤い血液がべっとりと付着している。 「糞、こいつら……!」  調子が狂う。闘志が湧かないのだ。...
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    48|作品名闇渡りのイスラと蒼炎の御子作者inoue_kazuki

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     暗い森の中を進むごとに、少しずつ背後の狂騒は遠のいていった。時折、木々の間に天火《アトル》の閃光が見えたりもしたが、どれも火花のように小さく、自分たちに向けられているものでないことは明らかだった。  かといって、イスラもカナンも、決して胸中は穏やかではない。むしろ怒りや悔恨、焦燥感といった感情の方が強かった。  仮に見つかったとして、自分たちだけなら無関係を装えるかもしれない。彼らは単に森の中を歩いていただけで、風読みたちとは何の関係も無いと言い張ることも出来ただろう。  背中に、風読みの一族の、最後の生き残りを背負っていなければ。  トビアは呆然としたままで、身体からは力が抜け切っている。埒が明かないので、イスラは彼を背負って走っているが、自分から掴まってくれないため、時々真後ろを走るカナンに押してもらわなければならなかった。  無理もない、と思う。  これまで平和な環境の中で、他人から愛されて育ってきた彼には、あの光景はあまりに受け入れがたいものだったのだ。イスラは内心、トビアの心が完全に粉砕されてしまったのではないかと疑ってさえいた。自分のように無神経ならともかく、彼は繊細すぎるし、それ以上に幼い。  もっとも、そんな風に同情心を寄せていること自体、イスラの内面の変化を示すものだった。以前なら誰がどんな風に殺されようが、いささかも心に留めなかっただろう。「足手まといだ!」と怒鳴って、放り捨てていたかもしれない。  ただ、今は、そんな内心の変化に意識を寄せているだけの余裕は無かった。彼は闇渡りとして、守火手として、道を切り開く義務があるのだから。...
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    48|作品名闇渡りのイスラと蒼炎の御子作者inoue_kazuki

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    「東インド映像」ですね。元は紅茶の輸出事務所だったのを従業員ごと買い取って映像屋にしちゃったという。
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    実はきぐるみCGよりそれを映像に馴染ませるほうが時間がかかってるってテレビの特集で見たときは、ものすごく地味だけどプロの仕事ってそういうとこに出るんだな…と感動した記憶があります。
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    そうですね、とにかくこの映画は映像にかける情熱がすごい。実は撮影が長期に渡ってるせいで、初期の頃撮ったものと最後に撮影した映像が結構質に差があるそうなんです。私は専門じゃないので詳しくないんですけど、新しい技術で古い映像を再現するのってかなり大変らしいんです。そこをなんとかするためだけに、映像処理専門の会社を立ち上げてますよね。そこまでやるか!って感じ(笑)
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     ——トキオウギルド内、ダジュー、マサ視点—— 「なるほどな。この半月で一応形にはなったといったところか」 「なんだよ偉そうに。だから討伐任務を割り当ててくれって言ってんじゃねぇか」 「うるさい。それに、俺は偉いんだ」 「んなこたぁどうだっていいんだよ。で? 手頃な討伐任務はあるかい?」  ダジューは目を細め、腕を組んで椅子に深く座り直す。  疾風結成から半月。  出来たてのチームがダンジョンに入り浸り魔核を二百個以上持ち帰ってきたというのだから驚きを隠せない。  今は国の方針でダンジョンマスターを討伐することは禁じられている。  そのため、もう周辺のダンジョンに疾風が満足できるような魔物は存在しなかった。 「まったく、おまえどんな魔法を使ったんだよ」 「あ? 俺は魔法なんて使えねぇぞ?」 「はぁぁぁああ」 「あんだ? 白々しい溜息吐きやがって!」  溜息だって吐きたくもなる。  ダジューにしてみればマサが根を上げてここに来るのを待っていたのだ。  それが蓋を開けてみれば中級冒険者チームとして満点以上の成長振りだ。  面白くないわけではないのだが、得体の知れない特訓方法で彼らを失うのではないかと気が気じゃない。  リュウは言わずもがなの戦争の要、女の子二人は地方貴族の令嬢だ。  普段なら間違ってもこんな男に身を預けるなんて真似はしないだろう。 「悪い悪い。それで、今までの功績は流石だが、力の程はどうなんだ? 本当に討伐なんてできるのか?」 「へへ、ようやっと話ができるみてぇだな。実は、頼みがあんだよ」 「なんだ? 金か?」 「それもそうだが、討伐となると、あの嬢ちゃん二人には荷が重そうでな。正直生きて帰れるかは保証できねぇ」 「……そうだろうな」 「そこでだ!」...
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    「ミナちゃん見て見てっ!」 「何だい?」 「安心してください、穿いてますよ」 「一応言っておくと、最初にポーズを取った時点で下着が見えていたかな」 「む~。やっぱ練習しないと駄目か」 「誰に見せるつもりか知らないけれど、遊んでいるなら置いていくよ」 「あっ! 待って! 梅も行くっ!」 「何湯があるか楽しみね~」  今日はミナちゃんと桃姉、それにお兄ちゃんと一緒にホビーショーへ遊びに行きました。まあ遊びに行ったのは梅だけで、桃姉達はアルバイトだったんだけどね。  そいでお兄ちゃんがあまりに疲れてボロボロゾンビーだったから、梅が見つけたお風呂屋さんで休憩することになったんだよ。梅、偉いでしょ? 「夕食時だからか、車の数の割には空いているね」 「じゃあじゃあ、露天風呂行こっ?」 「はいはい、慌てない慌てない。走るとうっかり転んだ挙句、水無月ちゃんの巻いてるタオルに手が引っ掛かってポロリしちゃうわよん♪」 「一体どこの少年雑誌の主人公だい?」 「わ~い! 貸し切りだ~っ!」  石造りの浴槽に、お茶みたいな色のお湯。うんうん、お風呂はこうで……あっ、この風呂、熱いっ! 掛け湯もそうだったけど、ここやたら温度が高いよ! 「あ~良い湯ね~」 「桃姉、熱くないのっ?」 「丁度いい温度じゃないか。梅君はまだまだ子供だね」 「む~。ていやっ!」 「ひゃっ?」  前までミナちゃんの後ろ姿って言えばカーテンみたいに長い髪だったけど、今は短くなった上にまとめてるから細い身体がバッチリわかるんだよね。  防御の薄い今がチャンスと、湯船に入ろうとするミナちゃんを後ろから羽交い絞め。そのまま腕を前に回して、タオル越しだけど胸を鷲掴みしてゲットだぜ! 「い、いきなり何だい?」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    「見て見て! このブレスレット良くない?」 「……作るのは難しい」 「何で作ろうとすんのよっ?」 「うん。ミズキのそれ可愛いね」 「どうしよっかなー…………決めたっ! 買ってくる!」  今日は私にミズキ、それに冬雪さんと水無月さんの四人でショッピング。このメンバーで出かけるのは初めてだけど、今はアクセサリー屋さんで物凄く楽しんでます。 「マグネットピアス……ふむ。こんなのもあるんだね」 「あ、それこの前テレビでやってたよ。磁石で取り外しできるし安いから、まとめ買いして友達と分けあう子とかいるんだって」 「この手の類は付けるだけで肩が凝りそうだよ。夢野君は何か買わないのかな?」 「うん。私もこういうのは見る方が好きだから」 「それもショッピングの醍醐味だね。ん……音穏、まさかそれを買うのかい?」  冬雪さんがボーッと眺めてるのはタトゥーシール。花柄とかハート、キスマークなんて付けてるイメージが全然沸かないけど、こういうの好きだったりするのかな? 「……陶器に描く模様の参考」 「「あー」」  納得して声が重なる。思わず顔を見合わせて、二人して笑っちゃった。  そんな私達を見て不思議そうに首を傾げる冬雪さん。本当に陶芸大好きなんだね。 「おっ待たせー」  ミズキがブレスレットを買った後は次のお店へ。今日のメインは洋服だけど、気になるお店があったら寄り道……なんて言ってたら、早速あったみたい。 「すまない。少し寄ってもいいかい?」 「あ、私も見たいかも」 「いいわね。行きましょ!」  という訳でペットショップへ。若干早足になった水無月さんが真っ先に向かったのは、店員さんに抱きかかえられている猫ちゃんの所でした。 「へー。猫も爪とか切るのねー」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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     問、以下の質問に対してYESかNOで答えよ。 ・共通編  一、自分の苗字か名前が珍しい  二、顔面偏差値は平均以上だと思う  三、髪の色が黒以外だ  四、誰にも負けない趣味・特技がある  五、一人暮らしである。または実家暮らしだが両親は家にいないことが多い  六、少人数の文化部に所属している  七、通っている学校が他にない特色を持っている  八、男の娘や雄んなの子の知り合いがいる。または自分自身がそうだ  九、彼女(彼氏)いない歴=年齢だ  十、財閥や理事長の子、アイドルや飛び級といった特別な生徒がいる ・男性編  一、妹がいる  二、幼馴染(幼稚園からの付き合い)がいる  三、母親がかまってちゃんだ  四、担任または部活動の顧問が若い女性だ  五、料理ができる  六、独り言が多い  七、筋肉質ではない  八、同性より異性の友人の方が多い  九、物事に対して消極的または鈍感だ  十、高校生になってから女子と一緒に出かけたことがある ・女性編  一、身長が平均より低い  二、バストがE以上だ  三、アイドルには興味がない  四、髪を下ろしたら腰より下まである  五、大食いだ  六、面倒見がいい、または世話焼きだ  七、つい暴力を振るってしまうことがある  八、同級生の男子に水着姿を見せてもOK  九、更衣室以外の場所で着替えたことがある  十、腐女子やレズ、エロゲー好きなど人に言えない趣味嗜好がある 「火水木クン。これ、教師編はないんですかねえ?」 「無いわね。イトセンは若いから今の自分でやってみても大丈夫そうだけど、まあ基本的に大人は高校生だった頃を思い出してやって頂戴」 「では、伊東は珍しい苗字に入りますか?」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    「あの相生って子、ユメノンにホの字だったりするんじゃない? 本当はきっと「僕と一緒に行かない?」って渡すつもりだったかもしれないわね」 「ミズキってば、すぐそういう方向に考えるんだから。それより音楽部どうだった?」 「あー、ちょっと堅苦しくて無理っぽいわ。もっと緩い部活じゃないと」 「緩い部活……一つ知ってるけど、行ってみる?」 「どこどこ?」 「陶芸部」  芸術棟の四階から一階へ階段を下りるアタシ達。ここって工芸とか選択してないと、図書室に用事でもない限り足を踏み入れる機会は滅多にない場所よね。 「ユメノン、よく陶芸部なんて知ってたわね」 「前にしたボランティアの話、覚えてる?」 「ああ、ウチの兄貴も一緒に行ったっていう幼稚園のやつ?」 「そうそう。その時に一緒だった地元の友達が陶芸部だって聞いて、どんな場所か気になったから一回見学したの。あ、部室はそこだから」 「ふーん」  こう言っちゃなんだけど、何だかジメジメしてそうな場所ね。  そんでもって中からカツンカツン聞こえるんだけど、陶芸ってこんな音するの? 「中々やるね」 「なんの、まだまだっ!」 「…………」  えっと……陶芸ってあれよね? 湯呑とか皿とか作るやつよね?  開きっ放しだったドアから覗いた結果、中でやってるのはどこからどう見ても卓球。紹介したユメノンも目を丸くした後で、何か物凄く複雑そうな表情してるし……。 「!」  あ、ジャージ着てる女の子がこっちに気付いた……ってかあの子、髪の毛を縛ってるから一瞬わからなかったけど、Fハウスで何度か見たことあるわね。  物凄く髪が長いから印象に残ってたのもあるけど、何より普通に美少女で綺麗だし。イメージ的に運動部かと思ったら、まさか陶芸部(仮)だったなんてね。...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    「今日は忙しい中、ありがとうございました」 「……ました」  八月も終わりが近づいてきたけれど、まだまだ暑い日は続く。  元気に蝉が鳴いている中、今日は部員全員で陶芸部の大掃除。協力してくれた先輩達にお礼を告げて、綺麗になった部室に残っているのはボクと音穏だけだ。 「……ミナ、お疲れ」 「ん、音穏もお疲れ様」  伊東先生に差し入れされた、お茶のペットボトルで乾杯する。  中学の頃は部室なんてものが無かった。  一応バスケ部には体育館の隅にある一畳サイズの小部屋が与えられていたけれど、大掃除なんてする機会はなかったし物が散乱していてボクは使わなかったかな。 「……どうかした?」 「いや、これからが大変になると思ったのさ」  先輩達は夏期講習の合間を縫って手伝いに来てくれた。それどころか受験生にとって忙しくなる時期なのに、文化祭の販売までサポートしてくれらしい。  理由はボクと音穏が販売未経験の一年生であり、陶芸部には二年生が一人もいないため。そして先輩が引退した後に陶芸部へ残るのも、ボク達二人だけだ。 「音穏は明日筋肉痛になるんじゃないかい?」 「……(コクリ)」 「普段の活動をする分には何一つ問題ないけれど、大掃除や文化祭は人手がいるね」 「……部員欲しい」 「来年の勧誘には力を注ぐとして、当面の問題は冬の大掃除かな」  一台につき四十キロ近い電動ろくろが十二台……普段は遊んでばかりの頼りない橘先輩だけれど、あの人がいなかったら正直もっと時間が掛かっていたと思う。  必要なら冬も呼べとは言っていたけれど、流石にセンター試験前とかに呼ぶのは気が引ける。だからといって伊東先生に迷惑を掛けるのは申し訳ない。 「ふむ、男手か……」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    「桃《もも》、忘れ物してない?」 「お財布よ~し! 鍵よ~し! 櫻のパンツよ~し! 携帯よ~し!」 「ちょっと待って桃姉っ! 今変なのあったよっ?」 「そうね~。やっぱ実家の鍵は置いていこうかしら~」 「そこじゃないよっ? パンツっ! 桃姉、何でお兄ちゃんのパンツ持ってるのっ?」 「何でって…………無断で拝借してきたから?」 「ヴェエエエッ?」 「ほら桃、だから言ったじゃない。やっぱりお父さんのパンツにしておきなさい」 「お母さんまでっ?」  うんうん、流石は私の妹。良い反応するわ~。 「あら、梅《うめ》には話してなかった? 女性の一人暮らしは下着泥棒とか変質者に狙われやすいから、洗濯そた時に男物のパンツを一緒に干しておくといいのよ」 「はえ~。 そ~なんだ~」 「ね~。桃姉さんもお母さんから聞いてビックリよ~。後は櫻の靴履いてっと」 「はえ? それも何かに使うの?」 「あ~した天気にな~れっ♪」 「占いたかっただけっ?」 「冗談よ冗談。はいは~い。準備オッケーで~す!」 「夏だから食べ物に気を付けて。後はたまには顔出しに戻ってきなさい」 「了解了解♪ ではでは行って参りま~すっ!」 「梅も行ってきま~す!」  ドアを開けた瞬間、むわっとした熱気……本当、あつはなついわね~。  そんな真夏にも拘らず駅まで見送ってくれる優しい妹と共に、十八年間過ごした我が家を出発。今日から桃姉さんの一人暮らしが始まろうとしているのでした。 「梅も一人で暮らしたいな~」 「寂しがり屋の梅には難しいんじゃない?」 「そんなことないもん!」 「本当に~? 桃姉さんがいなくても、ちゃんとやっていける~?」 「やっていける!」 「毎朝お兄ちゃん起こしてあげられる~?」 「あげられる……って、そんなことするのっ?」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    「店長が我が家に来るとか、随分久し振りな希ガス」 「相変わらず変わらない部屋だ」 「一体何をどう変えろと?」 「とりあえず壁一面と天井をポスターで埋め尽くした後に、フィギュア棚を設置だ。後は抱き枕と痛クッション、それにPCのモニターも四つは必要だ」 「いやいや、それだと完全に店長の部屋ですしおすし」 「兎にも角にも、明釷《あきと》の部屋にはごちゃごちゃ感が足りないんだ」  拙者のベッドの遠慮なく寝転がる店長。そこに痺れる憧れる。 「何にせよ今のお前がやるべきことは、俺とひと狩り行くことだ」 「しかしまた、随分と懐かしいですな。闘う相手は?」 「銀レウス」 「そっちの武器は?」 「ハンマー」 「おk把握。じゃあ拙者はガンスでがんす」 「尻尾は頼んだ」 『クエストを開始します』 「ん……ミステイクだ」 「どしたん店長?」 「回復薬忘れだ。まあ些細なこと……この程度の雑魚、応急薬で充分だ」 「さいですか。あ、いたお」 「何番だ?」 「三番ですな。ところで店長、今日は何しに来たん?」 「少しは部活に顔を出せ……だ」 「いや天海氏いると行きにくいですしおすし」 「その妹だが、パソコン部が居辛そうに見える…………だっ?」 『ゆうた希少種は力尽きました』 「ちょまっ! 店長、マジで何しに来たんっ?」 「勘が鈍っていただけだ。話を戻すが、最近の妹の様子はどうなんだ?」 「心配せずともクラスで仲良くやってるみたいだお」 「なら良いんだ。ついでに質問だが、お前の方はどうなんだ?」 「中間テストが終わって、拙者を見る目がようやく変わってきた感じですな」 「そんな喋り方だからだ」 「いや店長に言われましても――」 『ゆうた希少種は力尽きました』 「店長ぉぉっ?」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    ・5月2日(金) 「届いてる?」 「えっと……何て呼べばいいかな?」 『届いてるよ♪』 『男子からは去年、夢野《ゆめの》とか夢野さんって呼ばれてたかな』 「それじゃあ、僕も夢野さんって呼ぶね」 「夢野はよそよそしい気がする(笑)」 『うん、ありがとう! 笑』 『私は何て呼べばいい?』 「うーん」 「あだ名とか無かったから」 「普通に名前とか、夢野さんの好きに呼んで大丈夫だよ!」 『相生《あいおい》君だと二人いるもんね』 『あだ名……葵《あおい》だからブルーとか?』 「全国で600人くらいの、割と珍しい苗字なんだけど」 「ブルー(笑)」 「何だか落ち込んでそう(笑)」 『だよね 笑』 『じゃあ、葵君って呼ぼうかな』 「うん!」 「ブルーより葵君の方が嬉しいかも(笑)」 「あ、でもブルーでもいいよ?」 『葵君にする!』 『ブルーって、呼ぶ時に笑っちゃいそうだもん 笑』 「確かに(笑)」 「僕も笑ってる夢野さんを見て笑いそう(笑)」 『なら笑い堪える 笑』 『明日って部活あるよね?』 「午後からあるよ!」 「それを見て笑おうかな(笑)」 『ありがとう!』 『うわー』 『葵君はSだー 笑』 「確かタカミー先生、パート分けするって言ってたよね?」 「そういう夢野さんはMなの? (笑)」 『言ってた!』 『私はまともな人です♪』 「初めてだから楽しみ!」 「まともな人(笑)」 「時間大丈夫?」 『何その反応 笑』 『まともでしょー』 『私は時間大丈夫だよ』 『いつのまにか寝落ちしてるけど 笑』 「ま、まともだと思うよ(笑)」 「あ、それは僕もだから大丈夫!」 ・5月3日(土) 『まともです♪』...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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     ◆  運動は苦手。  でも中学にあった文化部は、科学部と美術部と家政部と吹奏楽部の四つだけ。  入りたい部活はなかった。  それに私が中一の時、弟はまだ小学生になったばっかり。  家で一人は可哀想だから、中学は帰宅部にした。  でも今は、やりたい部活がある。 「……失礼……します」  ノックしてから、静かにドアを開けた。  中にいた生徒は女の人が四人、男の人が一人。  でもノックと声が小さかったせいで、誰も気付かない。 「おや? お客さんですかねえ」 「……初めまして」 「どうもどうも。先生、陶芸部の顧問をしている伊東《いとう》と申します」  最初に気付いてくれたのは、白衣を着た先生……陶芸部なのに何で白衣?  でも不思議な先生のおかげで、先輩も私に気付いてくれた。 「あ、ひょっとして見学に来てくれたの?」 「……(コクリ)」  女の人が二人、笑顔でこっちに来る。  自己紹介をされた後で、私の名前を尋ねられた。 「……冬雪音穏《ふゆきねおん》……です」 「へー。ネオンちゃんかー。珍しいけど可愛い名前だねー」 「冬雪さんは見学と体験、どっちにする? 体験は粘土練ったり、ろくろ挽いたり。全部やると一時間くらい掛かっちゃうけど……」 「……体験……したいです」 「それじゃあ用意するから、ちょっと待ってて。あ、荷物はそこに置いていいよ」 「今日は大繁盛だねー」  言われた通り、大きな机に鞄を置く。  机の端で漫画を読んでいたツンツン頭の男の人が、チラリと私を見た。 「いよぉ」 「……(ペコリ)」 「ちょっとバナ! 暇なら少しは手伝ってよ」 「やなこった」 「もう!」  陶芸部なのに何で漫画?  少し不安になってきたけど、女の先輩は優しく接してくれる。...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    「ふにゃーお?」 「ん……おいでアルカス」 「にゃおん」 「よしよし。良い子だ」 「…………」 「………………少し、ボクの話に付き合ってくれるかい?」 「にゃおん」 「ふふ、ありがとう。キミは優しいね」 「…………」 「まず最初に確認しておこう。ボクは別に櫻のことを好きでも何でもない」 「にゃーん」 「バスケの練習試合に付き合ったのは桃ちゃんがいなくなって梅君が心配だったからだし、夢野君と楽しそうに話す櫻を見ても別に何も感じなかったよ」 「にゃーん」 「強いて言うなら、彼が嫌われないか不安だったかな。別に放っておいても良かったけれど、ボクが思っていた以上に櫻が陶芸部へ顔を出すせいでやたら目についてね」 「…………」 「だから櫻の恋路が上手くいくよう、少しフォローするようになったんだ。夢野君についての話を聞いたり、たまには褒めて上げたりしてね」 「…………」 「ただまあ、窯の番は色々と失敗だったかな。飴と鞭の使い分けは難しいよ」 「…………」 「コスプレをした頃だったかな。櫻が夢野君を呼び捨てにするようになっていて、ひょっとしたら夢野君も櫻のことが好きなんじゃないかと感じ始めたんだ」 「にゃおん」 「櫻も少しはまともになってきていたし、それならボクがフォローする必要もない。手の掛かる幼馴染の面倒を見るのも終わりだと思っていたよ」 「…………」 「………………そう思っていた筈なのに、何でだろうね」 「ふにゃーお?」 「別にボクが追いかける必要はなかったのに、気付けば走っていたんだ」 「…………」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    「――――って言ったらどうする?」  勇気を出して口から出た言葉。  紛れもない告白だったそれを、俺は誤魔化して質問へと変えていた。 「…………まずは離してくれないかい?」  返事を聞くまで離さない。  ビシッと決めてそう返すつもりだったのに、何でこうなったんだろう。  現実では、素直に拘束を解いている米倉櫻がいた。  とんだ小心者……いや、半端者だ。  雰囲気に呑まれず告白しない選択をした葵の方が、ずっと男らしい気がする。 「………………」  阿久津は身体を起こすと、背を向けつつ軽く汚れを払った。  そして俺の方へ振り返る。  ――――その表情を見て後悔した。 「前にも言っただろう?」  その一言だけで充分だった。  しかし阿久津は誤魔化すことなく、はっきりと告げる。 「ボクはキミが嫌いだよ」  真っ直ぐに俺の目を見て。  偽りではないことを証明するように。  彼女は、嫌いだとはっきり答えた。 「………………」  何を勘違いしていたんだろう。  阿久津とまた話すことができた。  遊んだり勉強したり、一緒の時間を共有した。  それだけで満足すべきだった。  こうなることは、わかりきっていた筈だったのに……。 「そっか…………そうだよな…………」  呆れ果てている少女へ、苦笑いを浮かべつつ応える。  桜を照らしていた月は、気付けば雲の陰へと隠れていた。 「そんな馬鹿な質問をしている暇があるなら、夢野君とのデートプランでも考えたらどうだい? それこそ夜桜見物なんて、打ってつけだとボクは思うけれどね」  幼馴染は静かにそう告げると、一人先に歩き出す。  それから家に帰るまで、俺が阿久津と言葉を交わすことはなかった。...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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     梅が行こうと言った場所は銭湯というよりも、風呂だけでなくマッサージやトレーニングコーナー、食堂など色々ある健康ランドだった。  一人男湯に入ると、疲れた身体を洗い流す。屋内の天井で男湯と女湯が繋がっているとか、露天風呂の柵の向こうで姉貴達の声が聞こえるとか、そんな構造になっている訳もない……ってか本当にあんのかよ?  阿久津の旅館羽織姿は中々にレアだったが、それ以外は特筆すべき点も無し。座敷にて夕食を食べた後、もう一風呂浴びてから俺達は公衆浴場を後にした。 「――――で、あの後に回ったらね……わんこっち! あの懐かしのわんこっちがあったんだよ! 勿論にゃんこっちも一緒に置いてあって――――」  元気一杯な妹の声が耳に入り、ゆっくりと目を開ける。  どうやら車に揺られているうちに眠ってしまったらしい。それもかなり寝ていたのか、窓の外を見ると既に見知った辺りまで帰って来ていた。  助手席に座る梅が姉貴にホビーショーの話をしている点は、目を閉じる前と何一つ変化なし。姉貴も疲れている筈だが、そんな様子は微塵も見せない。 「…………」  ふと隣を見ると、阿久津は頬杖をついて外の景色を眺めていた。  切ってもなお長い髪が、開けられた窓から入る風によってサラサラと靡く。黙っていれば可愛い横顔と合わせて、思わず見惚れてしまう程に綺麗だった。 「?」  ボーっと眺めていて、ふと違和感に気付く。  静かに口呼吸をしていた少女は、俺の視線に気付くと軽く視線を向けた。 「ん……起きたんだね」 「あ、ああ」 「………………」  どことなく顔色の優れない阿久津は、おもむろにポケットへ手を入れる。取り出した棒付き飴を見て確信を得た俺は、少し考えた後で運転手へ声を掛けた。 「姉貴、代山《しろやま》公園で止めてくれるか?」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

  • 24

    「…………疲れた」 「それは音穏の真似かい?」 「違うし……もう箸より重い物が持てん……」 「キミはもう少し体力を付けるべきだね」  休憩室にて高そうな弁当のラスト一口を食べ終えた幼馴染の少女は、箸を持ったままバタンキューしている俺を見るなりやれやれと溜息を吐く。  設営と聞いて文化祭のノリをイメージし、のんびり阿久津と話でもしながら準備できるかと思いきや大違い。男は力仕事を回され、共に行動する機会すらなかった。  次から次へと指示が飛び交い馬車馬の如く働かされた結果、既に午前だけでクタクタ。目の前にある昼食も半分ちょっとしか喉を通らずにいる。 「俺の体力不足以上に仕事がキツかったんだっての」 「ふむ。とてもそうは見えないけれどね」  少女が室内をぐるりと見渡す。休憩は交代制であり他にも何人かのバイトがいたが、今この部屋に残っているのは俺と阿久津の二人だけだ。  その理由は限られた休憩時間を使ってイベントを見に行くため。疲れを知らない姉貴もその一人であり、今頃は梅と一緒に駆け回っているに違いない。 「阿久津は行かないのか?」 「ボクは別にホビーショー自体には興味ないよ」 「なら何でバイトしたんだ?」 「何故かと言われたら、まあ社会経験かな。目指している職業に直接結びつくことはないと思うけれど、職場で働く人を見て学んで損はないからね」 「目指してる職業って?」 「話していなかったかい? 獣医師だよ」  もう将来を決めている辺り、流石は阿久津である。  そこまで動物好きだったイメージはないが、アルカスを飼ってから変わったのかもしれない。俺にはあの猫のどこが可愛いのか、いまいちわからないけど。 「へー。獣医っていうと、やっぱ医学部とかになるのか?」 「獣医学部だね」...
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  • 25

     春休みは宿題も大して出ないため、年に三回ある長期休みの中で一番ゆっくりできる。  終業式にパッとしない通知表を受け取ってから、あっという間に約一週間が経過。火水木が花粉症で苦しんでいるため、陶芸部で何か企画されることもなかった。 「ポーン。多分次辺りの交差点を、左に右折かもしれません」 「曖昧過ぎてナビになってないだろ。クビだクビ」 「お兄ちゃん、かもしれない運転知らないの?」 「いや、かもしれない運転ってそういう意味じゃねーからっ!」 「それ以前に左へ右折だと、ドリフトすることになりそうだね」  カーナビの真似事をする梅に、俺と阿久津から突っ込みが入る。ちなみにチラリと本物を見れば、地図情報が古いため異空間の中へと突っ込んでいた。  ハンドルを握るのは当然姉貴で、助手席には未だに眠気の取れない俺。後ろでは新旧バスケ部の部長が話に花を咲かせていたが、どうやら話題が尽きたらしい。 「む~。じゃあお兄ちゃんカーナビやってよ~」 「ポーン。安全のため今すぐ車を降りて、電車に乗り換えてください」 「ちょっと、ちょっとちょっと! 今日はこれ以上ない安全運転でしょ~? 櫻カーナビは駄目。水無月ちゃんカーナビに機能切り替えっと」 「…………はあ。とりあえず助手席の男を降ろせばいいんじゃないかな」 「どんなナビだよっ?」  辛辣なガイドに梅桃コンビが爆笑する。こうして四人揃うのは相当久し振りだが、今思えば男1女3の状態に慣れている理由はコイツらが原因だったか。 「じゃあ次は…………山手線ゲームっ!」 「イェ~イ! どんどんパフパフ~っ!」 「ボクと櫻がやるから、桃ちゃんは運転に集中してくれないかい?」 「え~? それくらい大丈夫なのに~」 「喋ってたら、前みたいにまた道間違えるぞ?」...
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  • 26

    『――――黄色い線の内側までお下がりください――――』  駅に着くと、丁度いいタイミングでアナウンスが響く。  しかし電車がやってきたのは反対ホーム。俺達の中で乗るのは火水木だけだ。 「んじゃ、お疲れ!」  マスク少女に別れを告げた後で、残された俺達三人は人の少ないホームの隅へ移動すると大人しく電車を待つ。特に遅れてもないし、大体五分ってところか。  ――――ビュォオオオッ――――  そんな時、唐突に神は舞い降りる。  風でスカートが捲れるなんて都市伝説。何故なら下から上に風が吹くなんて都合のいい場所は早々ない…………普段が自転車通学の俺は、そう思っていた。 「っ?」  駅のホーム。  それは風が吹き上げるには絶好のスポットだった。  二人の少女の短いスカートが勢いよく捲れる。  太股が露わになり、肌色の素肌が目に入った。 「「――――っ!」」  黒いブルマ……そして白と水色の水玉模様。  禁断の領域が見えたのは一瞬だけ。少女達は慌てて上からスカートを抑えつけると、一人は顔を真っ赤にして俯き、もう一人はジロリと俺を睨む。 「…………キミは何も見なかった。いいね?」 「ア、ハイ」  淡々と告げた阿久津は、俺を避けるように冬雪を連れて距離を取る。若干照れているように見えなくもなかったけど……いや、気のせいか。  別に何も悪くない筈なのに二人から距離を置かれたのは悲しいが、未だにスカートを抑えている姿を見て俺のつくしが芽吹きそうだったため助かった。 「音穏。夏はともかく、冬や春は穿くべきだよ」 「……でもゴムの部分が制服と合わさるの嫌い」  小声の会話が聞こえる。冬雪が下に穿いてないのはそういう理由だったのか。...
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  • 27

    「へー。こんな所があったんだ」  完成した作品を窯場へ運ぶと、初めて足を踏み入れた夢野が辺りを見渡す。 「まあ来ることなんてないもんな」 「作品を焼く窯っていうのは?」 「あれが電気窯で、こっちの奥にあるのがガス窯」 「へー。何が違うの?」 「えっと……確か作品を沢山焼く時はガス窯で、少し焼く時は電気窯……だったかな。ガス窯の方は焼くのに時間が掛かるから、学校に泊まるんだよ」  違いについては先日冬雪から聞いたばかりだが、いまいち覚えておらず適当に説明。記憶に残っているガス窯についての話を掘り下げる。 「米倉君も泊まったことあるの?」 「ああ。ほら、火水木が見学に来た日があったろ? 丁度あの日だな」 「水無月さんと雪ちゃんと一緒に?」 「そうだけど…………?」  言いかけたところで、夢野がジトーっとした目で俺を見ていることに気付く。何やらあらぬ誤解を受けていそうなので、慌てて訂正すべく早口で言い直した。 「いや、泊まりって言ってもあれだぞ? 地獄の勉強会だったり、カップ焼きそばからカップ麺を錬成したり、遊んだのは卓球を少ししたくらいだって!」 「ふーん。私が待ってる間、そんなに楽しいことしてたんだー」 「だからそうじゃなくて……ん? 待ってるって?」 「米倉君がコンビニに来るの、あの日ずっと待ってたんだけどなー」 「え? 何でだ?」  不思議に思い尋ねると、夢野は人差し指でそっと俺の唇を抑える。  もう何度目になるかわからないが、これだけは耐性が付かずドキッとしてしまう。指の腹の柔らかさを感じている中で、少女は悪戯めいた笑顔を浮かべた。 「さて、何ででしょうか?」  質問に質問で返した夢野は、くるりと180度方向転換する。...
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  • 28

    「あ、どうも……」 「随分とボコボコにしてくれたじゃねぇか」  トイレで用を足していると、橘先輩がやってくるなり二つ隣の便器に立つ。  結論から言うと、勝負の結果は俺の圧勝だった。 「すいません」 「謝んじゃねぇよ。所詮ゲームだろ」  そのゲームでムキになって何度も挑んできたのは、他でもない先輩である。  初戦は他二人がいなくなった時点で、俺と橘先輩はお互いに二ストックずつ。一度目は投げ飛ばした後で必殺のカッターをダイレクトにぶち当てて仕留め、二度目は復帰しようとしたところをドリルキックで容赦なく蹴落とした。  リベンジに燃える二回戦では集中的に狙われたが逆に返り討ち。四人の中で真っ先に橘先輩がステージから姿を消すことになる。 『アイテム無しのサシでやらせろ』  そう要求されての三回戦はタイマン勝負。俺もピンクの悪魔から先輩と同キャラである超能力少年にして挑んだ結果、力の差を見せつける形で完全勝利を収めた。  負けっぱなしの橘先輩は次から次へとソフトを変えるが、どれも大乱闘に比べると腕は普通。レースゲームで火水木に負け、シューティングゲームでは阿久津に負け、爆弾男的なアクションゲームにおいては冬雪に負ける始末だ。 「新入部員。確か櫻っつったよな?」 「はい」 「水無月の奴と同中か?」 「そうです」 「何で陶芸部なんかに入ったんだ? 時期的にも、俺達が引退した後だろ?」 「えっと、阿久津に誘われまして……」 「成程な」  俺が手を洗っている中で、橘先輩は隣に立つと静かに呟く。 「お前、水無月のことをどう思ってんだ?」 「え……?」 「…………いぃや、何でもねぇよ」  思わず聞き返してしまったが、別に聞き取れなかった訳じゃない。...
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  • 29

    「アタシ前から気になってたんですけど、テーブルゲームとか漫画はともかく何でテレビゲームのソフトまで入ってるんですか?」  合宿話に華を咲かせた後で、火水木が橘先輩に尋ねる。  確かにそれは俺も気になってはいた。携帯ゲーム機のソフトならまだしも、引き出しの中に入っていたのは随分と古い据え置き機のソフトやディスクだ。 「何であるかっつったら、そりゃ遊ぶために決まってんだろ」 「遊ぶって、ここで……?」 「ぁん? 知らねぇのか?」  一応この陶芸室は授業で使われることもあるため、アンテナの繋がっていないテレビとDVDプレイヤーが置いてあったりする。しかしゲーム本体は当然ない。  橘先輩はチラリと伊東先生を見ると、糸目の顧問は困ったように溜息を吐いた。 「仕方ありませんねえ。お別れ会ということで、今日だけは特別に構いませんよ」 「流石センセイ。話がわかるぜ」  一体何を始めるつもりなのか、伊東先生が廊下側のカーテンを閉める。  橘先輩は引き出しの奥底に眠る、教科書サイズの塊を取り出した。前々から気になってはいたが、一体何に使うのか見当もつかなかった一品だ。 「?」  火水木が不思議そうに眺める中で、橘先輩は一度陶芸室を出ると窯場へ向かう。  少しして戻って来た彼の腕には三色のコードやACアダプター、そして四本のコントローラーが抱えられていた。 「ちょっ? まさかそれ――っ?」 「そのまさかだ」  テレビの前に持っていった正体不明の塊に、コード類が繋げられていく。そしてソフトを挿した後にスイッチを入れると、ゲームのデモ画面が表示された。 『――――大乱闘っ! スマーーーーーーーーーーーッシ――ピロッ! ピッピッ! ピッピッピッピッ! バーモーオエン!』 「ほら、やろうぜ。ストック3でいぃか?」...
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  • 30

     今日から授業は午前のみ……そしてそれすなわち、俺の腹が減る日である。別に今は金欠って訳じゃないが、金はいくらあっても困らないからな。  風が強いだけでなく雨まで降っている中、またもや芸術棟へ三人で移動してから如月と入り口で解散。陶芸室のドアを開けると、中には誰もおらず閑散としていた。 「ああ、そうだ冬雪。これ、ホワイトデーのお返し」 「……ありがとう」  ジーッと袋を眺める冬雪。中のクッキーは手作りだが、外装は手作りじゃないぞ?  程なくしてドアが開くと、入口で鉢合わせしたのか阿久津と火水木が一緒だった。夢野も来るかと思ったが、先に音楽部の方へ行ったみたいだな。 「やっほ……ほぁ……へくしっ!」 「……二人とも、お疲れ」 「よう」 「やあ……ん? 音穏、それはどうしたんだい?」 「……ヨネから貰った」 「櫻が? 正露○はあったかな……」 「おい」  クッキーをまじまじと眺める阿久津。冬雪といい、そんなにジロジロ見られると何だか恥ずかしい。クッキーって見て楽しむ物じゃないよね? 食べ物だよねこれ? 「手作りだなんて、キミにしては力が入っているじゃないか」 「まあ、火水木に言われてな」 「何かしら裏があるだろうとは思っていたけれど、そういう理由なら納得だよ」 「アタシ的には、力以外にも色々と入れてほしかったんだけどねー」 「色々って何だよ? 毒か?」 「何で真っ先に浮かぶの……が……ふぇ……っくしっ!」  雨でも花粉が飛んでいるのか、それとも粉っぽい陶芸室のせいか。相変わらずマスク着用の火水木は、舐めると甘いらしいセレブなティッシュで鼻をかむ。  阿久津が正面の席に腰を下ろし、左隣には火水木が座る。そして左斜め前には冬雪と何一つ変わりない定位置だが、夢野の席は一体どこになるんだろうか。...
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  • 31

     火水木家を後にして黒谷町へ帰還した俺は、真っ直ぐ家に帰らず寄り道をする。 「本当はユメノンも呼ぼうとしたんだけど、今日はバイトだったのよね」  片付けが終わった後で耳にした火水木の呟き。もしかしたら当初の目的は、クッキー作りに奮闘する葵の姿を見せることだったのかもしれない。  手作りである以上、渡すなら早いに越したことはない。既にバイトが終わっている可能性もあるが……そういや夢野って、普段は何時までやってるんだろう? 「らっしゃーせー」  コンビニに入ると透き通るような美声の代わりに、中年男性のだるそうな声が出迎える。しかし夢野が不在という訳でもなく、少女はレジにいる客の対応中だった。 「こちらのお弁当は温めますか?」 「当たり前だろうが。あとタバコ」 「失礼致しました。申し訳ありませんが、何番のタバコでしょうか?」 「チッ……7番だよ」 「ありがとうございます。お会計が――――」  コンビニでバイトをしていれば、きっとこういう嫌な客も多いんだろう。明らかに態度が悪いオッサンを相手に、夢野は笑顔を崩さずレシートに乗せたお釣りを渡す。 「ありがとうございました」  見ているだけで胸糞悪いくらいなのに、少女は客が出て行った後も悪口どころか溜息一つ吐かずに笑顔で仕事をこなす。店員として立派な姿に感服だ。 「いらっしゃ……米倉君っ?」 「よう。あ、袋いらないんで」  桜桃ジュースを片手にレジへ向かうと、滅多に見せない驚きの表情を浮かべる夢野。普段なら店員モードへ戻るところだが、今日は手を動かしながら話を続ける。 「突然だったから、ビックリしちゃった。いつの間に来てたの?」 「ついさっきだな。何か大変そうだけど大丈夫か?」 「え……?...
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     マーガリンをボウルに入れて溶かし、砂糖と卵を入れてよく混ぜる。そこにホットケーキミックスを投入し粗練り……じゃなくてゴムベラで掻き混ぜる。  後はオーブンで十五分くらい焼くのみと、至って簡単なお菓子作り。まあこんなに楽なのも、調べるだけでレシピが出てくる文明の利器があってこそだ。 「…………で、アンタは何やってんのよ?」 「クッキー作りだな」(カチカチカチカチ) 「そうね。何枚作ったの?」 「大体千兆枚だ」(カチカチカチカチ)  そしてその文明の利器の中で、俺は淡々とクッキーを作っていた。  正しくは火水木家リビングにあるパソコンでクッキーをクリックして錬成し、そのクッキーでクッキーを作るためにお婆ちゃんなり工場なり宇宙船なり反物質凝縮器を買っている。何を言っているのかわからねーと思うが(略)。 「兄貴も一時期やってたけど、クッキー作るだけで何が面白いのよ?」 「増えていく数字に何とも言えない高揚感を覚えるな」 「だからって人の家に来てやることがそれ?」 「仕方ないだろ? 暇なんだから。ってかこれ、その兄貴のデータだぞ」 「何で残ってんのよっ?」 「クッキーだけに、クッキーを削除しないと消えない的なやつだお」  一応補足しておくと前者のクッキーはポッキーと同じ発音であり、後者のクッキーはポッキーゲームのポッキーと同じ発音である。どちらも同じポッキーなのに何で発音が違うのかは俺も知らない……教えて偉い人。  ちなみに真面目な方のクッキー作りは大した問題も起きず、一足先に焼き終えたアキトと入れ替わる形で現在はオーブンの中に入れてある。 「何て言うか、もうちょっとネックも力入れて良かったんじゃない?」 「こんな感じか?」(カチカチカチカチカチカチカチカチ) 「そっちじゃないわよっ! アンタが焼いてるクッキーの話っ!...
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    「えっ? こ、これっ?」 「ですな」 「…………でかくね?」  それが火水木家を見た、最初の感想だった。  昼過ぎに駅で合流した後、近場のスーパーで材料の調達。そのままマスクマンのアキトに案内された二階建ての家を前に、俺と葵は口を開けて呆然と立ち尽くす。  別に広大な庭園だとか、プールやら噴水があるような豪邸ではない。ただ我が家が二つは余裕で入るくらい敷地が広く、庭にはバーベキュー用スペースまであった。 「そっちじゃなくて、こっちだお」 「「?」」  案内されたのは玄関ではなく何故かその反対側。まさか裏口があるというのか?  従来における俺の豪華は『トイレが二つある家』という定義だったが、この火水木家は全てを覆す予感がする。そしてその予感は程なくして的中した。 「えぇっ?」 「…………マジかよ」  俺の人生において初めて目にした裏口のドア。  それは普通に一階にあるのではなく、階段を経て二階へ直接繋がっていた。 「二人とも、驚きすぎでは?」 「「いやいやいやいや」」  葵と一緒に手をブンブン横に振る。こんなの誰が見ても驚くだろ。  階段を上がりドアを開けると、L字に折れ曲がった廊下が広がっている。二階の玄関という新たな環境で靴を脱ぐと、左右に一つずつあるドアのうち右側に案内された。 「ちなみにそっちは天海氏の部屋ですな。入ったら死ぬと思っていいお」 「ええぇっ?」 「じゃあ部屋の主は死体じゃねーか……あ! これが本当の腐った死体か」 「耐性のない人間が見たら、間違いなくSAN値直葬ですしおすし。あ、ちなみにトイレは裏口から入ってすぐのそこと、階段を下りた先にありますので」  やはりトイレは二つか。家族の人数分あったらどうしようかと思ったぜ。...
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  • 34

    「まあ、こんな感じかな」  手本として湯呑を作ってみせると、夢野からパチパチと拍手が送られる。  菊練りは多少適当でも何とかなるため不慣れなままだったが、成形はできないと何一つ作れない。幸いにもそこそこ上達した腕は落ちていなかった。 「そんじゃ、やってみるか?」 「はい!」  土殺し等の面倒な工程を済ませた状態で夢野に椅子を譲る。未だに後輩ごっこは続いており、敬語口調に違和感を覚えるが悪い気はしない。 「えっと、手に水を付けて……こうですか?」 「そうそう」 「何ていうか……不思議ですね」  微笑みながら応える夢野だが、その感覚は物凄くわかる。  俺が後輩を育成している中、我らが部長はといえば珍しい来客の相手をしていた。 「雪ちゃん、変わらないねー」  アホっぽい女の先輩が、冬雪の頬を優しく引っ張る。 「ここに来るのは……半年振りですか……?」  幸薄そうな女の先輩は、懐かしそうに陶芸室を眺めていた。 「冬雪さん、部長の仕事は大丈夫? 大変じゃない?」  これといった特徴もない、真面目そうな女の先輩が尋ねる。 「……ふぁいひょふれふ」 「「「可愛い」ねー」」  伊東先生が準備室へと戻ってから少しした後で、ノックも無しに開けられたドア。てっきり阿久津が来たのかと思いきや、姿を見せたのは元陶芸部の先輩達だった。  家庭研修期間の終わった三年生だが、どうやら今日は卒業式の予行があったらしい。屋代は生徒数が多すぎるため、式に参加する在校生は生徒会や吹奏楽部のみ。そのため一般生徒である俺達にとっては、全く縁のない行事だったりする。 「あっ!」 「ん? ああ、あるある」  受験を乗り越えた先輩の話を聞いていたら、夢野が小さく声を上げた。...
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     昔は入学式に咲いていた桜も、今じゃ時期がずれて卒業式に咲く。  そして今日みたいな風の強い日は、桜吹雪の中を走るのが気持ちいい。更に登校時は追い風だったため、ペダルを漕がずの疾走は本当に幻想的で最高だった。  ――――ビュォオオオッ―――― 「うおっ?」 「……袋が飛んでる」  そんな心地良い風は、放課後になり益々勢いを増していた。  昇降口を出た矢先、音が聞こえる程の風が吹き荒れる。今にも飛んでいってしまいそうな冬雪の言う通り、強風に煽られたビニール袋が優雅に空の旅をしていた。 「これで春何番だ?」 「……三番?」 「(コクコク)」  中庭を抜けて芸術棟に入るだけなのに、一分足らずの道のりが妙に遠く感じる。珍しく一緒についてきた如月は、風でバタつくスカートを手で押さえていた。  その仕草は中々にそそられるが、この世に生まれて十六年。俺の辿り着いた結論は『風でスカートが捲れるのはアニメの中だけ』だったりする。そもそも落ち着いて考えてみれば、平坦な道で下から上に風が吹く訳ないんだよな。 「……ルー、バイバイ」 「ぃ」  とてとてと去っていく美術少女を見送る陶芸少女。そういや百人一首の際に判明した『冬雪スカートの下パンツ説』だが、普段からなのかは未だに不明だ。  陶芸室に入ると、細い目をした白衣の顧問、伊東《いとう》先生が欠伸をしている。今の時期は通知表その他諸々で忙しいらしく、こっちへ顔を出すのは久し振りだった。 「ふぁああ……ほや、おはようございます米倉クン。冬雪クン」 「ちわっす」 「……こんにちは」  定位置に荷物を置いた後は、とりあえずまったり休憩。昨日成形した作品はまだ乾いていないから削れないし、これといってやることもない。...
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    『ヴヴヴヴヴ……ヴヴヴヴヴ……』  信号待ちの途中、ポケットの中で携帯が振動する。  画面に表示されているのは、いつも狙ったように俺の帰宅途中で電話をしてくる騒がしいマイシスター……ではあるものの、今日は妹ではなく姉の方だった。 「もしもし?」 「もしもし? 私桃姉さん。今貴方の後ろにいるの」  チラリ(信号を待つ見知らぬおばさん) 「ぶはっ! げほっ! ごほんっ! んんっ!」  くだらないネタなのに思わず噴き出す。メリーさん(40)とか嫌過ぎるだろ。  笑っては失礼なので途中から咳き込む振りをして誤魔化した結果、幸い相手は不審に思っただろうが気付かれずには済んだらしい。何か本当にすいません。 「何よ~? 櫻ってば、こんなネタで笑っちゃうの?」 「違うっての! それより、どうしたんだよ?」 「さて問題です。どうしたんでしょうか?」 「知るか。切るぞ?」 「いゃ、ちょと待ってちょと待ってお兄さん~♪」 『ピッ』 『……ヴヴヴヴヴ……ヴヴヴヴヴ……』 「…………もしもし?」 「本当に切ることないでしょ~? 姉さん今のショックたよ~?」  正直に言うと、一度こういう風に切ってみたかったんだよな。家族だからいいかなと思ったけど、やっぱりやられた方は割と傷つくらしいので止めておこう。 「で、用件は?」 「…………何だっけ?」 「忘れたのかよっ?」 「あ! 冗談よ冗談! バイトの件、どうするか決めた?」  明らかに今思い出した雰囲気だったけど、面倒だし突っ込まないでおこう。 「ん……一応やってみることにするわ」 「了~解~。そうそう、それとお使いの要請で~す」 「今回は何だ?」 「週~刊~少~年――――」 『ピッ』...
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     雪が溶ければ水になり、雪が解ければ春になる。水が冷たいと作業する気にならない陶芸部も、丁度良い陽気になったことで活動を始めていた。  眠そうな眼にボブカットがトレードマークの部長、冬雪音穏《ふゆきねおん》は今日もせっせと土を練った後で、俺の横を往復し電動ろくろを挽く準備をする。 「……その歩、危ない」 「へー。冬雪も将棋できるのか?」 「……盤から落っこちそう」 「そっちっ?」  天然ボケをかましてくれた冬雪だが、その表情は若干不満そうである。まあこんな絶好の陶芸日和にも拘わらず、将棋を指していれば仕方ない話だ。  ちなみに対戦相手は髪を二つ結びにした眼鏡少女。胸と声がでかいのが取り柄なアキトの妹である火水木天海《ひみずきあまみ》だが、今日は胸……じゃなくて声が小さい。 「王手っと。これで詰みだな」 「異議あり」 「それを言うなら待っただろ? どこの逆転する裁判だよ」 「アンタってこういうどうでもいい特技多いわね」 「余計なお世話だ……って、将棋盤の上にオセロを置くな。挟んだからって俺のと金を勝手にひっくり返して歩に戻すな」 「じゃあこう?」  反転が駄目なら寝返りと、と金の向きを変えて自分の駒にする火水木。いつもよりテンションが低い癖に、妙に鋭いボケを見せてくるな。  マスクを付けてパンダみたいに垂れていた少女は、箱ティッシュで鼻をかむ。米倉家は花粉症にならない体質なので経験はないが、見ているだけで大変そうだ。 「辛そうだけれど、大丈夫かい?」 「毎年のことだから。本当この時期は眼と鼻を取り外して洗いたくなるわ」 「……マミ、無理しないでいい」 「ツッキーもユッキーも、ありがとね」...
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    「ぶえっくしょい!」 「えっと……アキト君、大丈夫?」  いつも通り昼休みに集まり、食事を終えたズッコケない三人組。その頭脳担当である火水木明釷《ひみずきあきと》は、花粉症のためマスクを着けていた。 「ゲーム実況者とか歌い手としてデビューするんだろ?」 「あるあ……ねーよ。仮に歌うなら拙者より、うってつけの人材がいるのでは?」  ガラパゴスなオタクことガラオタが首で示した先にいるのは、可愛い担当の男の娘。冷え症なのか未だに掌が半分も隠れる大きめのセーターを着た相生葵《あいおいあおい》は、自分のことだと時間差で気付いたらしい。 「えっ?」 「確かに葵なら男も女もホイホイ釣れそうだな。何かそれっぽい真似してくれよ」 「えぇっ? ぼ、僕そういうの見ないからわからないよ」 「なら何の物真似ならできるんだ?」 「ええぇっ? も、物真似は確定なのっ?」 「ちなみに拙者はピ○チュウの真似ができるお」 「アキトのピ○チュウまで3、2、1、ハイッ!」 「ドゥッペレペ!」  まさかのゲーム版かよっ!  予想の斜め上の物真似に、俺と葵の腹筋が崩壊した。 「他には、某アンパンの真似もできるお」 「や……やってみてくれ」 「バ○キンマン、もう許さないぞ!(裏声)」  お、今回はまともか?  ただ姉貴のド○えもんよりクオリティは高いが、そっくりという程でもない。 「本当の本当に怒ったぞ!(裏声)」 「ん?」 「ガチのマジギレだぞ!(裏声)」  腹筋が爆死した。本人が言いそうにない系の物真似は卑怯だろ。  向かいでは完全にツボに入ったのか、葵が腹を抱えて笑っている。あーあー、笑い過ぎて咳き込み始めちゃったけど大丈夫なのか? 「相生氏、大丈夫? おっぱい揉む?」 「えっ……げほっ、えほっ!」...
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    「櫻」 「んぅ…………?」  耳元で俺を呼び起こすのは、聞き慣れた幼馴染の声。  目を開けると、そこはいつもの陶芸室だった。 「寝ていたのかい? ほら、反対だよ」 「反対?」  顔を上に向けると、阿久津が俺を見下ろしている。  頭の中は朧気なままだが、自分が膝枕をされていることは理解した。 「ボクの方を向いてどうするんだい?」 「え?」 「まだ寝惚けているみたいだね。全く、キミは本当に手が掛かるよ」  耳かきを手にした少女は、やれやれと溜息を吐く。  並べられた椅子の上という不安定な寝床から落ちないよう、阿久津は俺の身体を支えながら自分の方へ引き寄せると耳掃除ができる横向きにした。 「!」  柔らかい太股に顔が乗せられ、黒タイツの感触が頬に当たる。  目の前には短いスカート。  少し上を見れば、ブレザー越しではわかりにくい控えめな胸が目に入った。 (ああ、そうだ……窯の番をしてて、眠気が限界だったんだっけ…………)  あれからどれくらい寝ていたんだろう。  そんな疑問を打ち消すように、幼馴染は耳元で囁いた。 「大人しくしているんだよ」  その吐息にドキッとしていると、耳かきが入れられる。  気持ちいい。  耳の中を弄られる快感に恍惚としていた。 「何をしているんだい?」 「え? あっ――――」  …………無意識だった。  だらりと垂れ下がったまま、収まりの悪かった右手。  置き場所に困っていたそれを、うっかり阿久津の太股へ乗せていた。 「動かない」 「っ!」  すぐさま手を戻そうとしたが、少女に制止され黒タイツの上に留める。...
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     ラバーダッキングという言葉を知っているだろうか。  問題へ直面した際に、物に話しかけることで頭の中が整理され解決法を閃くという、主にプログラマの間で使われるテクニックだ。  大切なのは誰かに話しかけるという行為。つまり相手が人間である必要はなく、ゴム製のアヒルの玩具=ラバーダッグを相手にしたことが名前の由来である。  いつぞやこの俺、米倉櫻《よねくらさくら》が幼馴染の少女に教わった勉強方法はこれと似ており、語りかけるように声を出すと記憶にも効果的らしい。 「そういえば、如月さんって美術部だっけ?」 「(コクコク)」 「じゃあやっぱり大学も芸術関係に行ったりするのか?」 「(コクコク)」  さながら沈黙のクラスメイトこと如月閏《きさらぎうるう》との会話はアヒルの玩具ならぬ、首が上下に動く赤べこを相手に話している気分だった。  小学生サイズの小柄な身長と、準備に時間が掛かりそうな編み込みの髪。エロゲーの主人公並みに前髪が長く、ド○クエの主人公並みの無口っぷりだが、クラスにおける如月の立ち位置は村人Aといった感じである。 「芸術って理系と文系、どっちなんだ?」 「ぃ」 「えっと…………理系?」 「(フルフル)」 「へー。文系なのか」  陶芸をやっていると幾何学模様とか聞くし、数学ってイメージなんだけどな。  無言で歩くのも気まずいため色々と話しかけてみるが、如月は相変わらずの反応である。電子辞書の鍵を開けたくらいで親密になれるほど、世の中そう甘くはない。  そんな隠れ巨乳疑惑のある少女と一緒に屋代学園二階の渡り廊下、モールを歩いているのは編集委員会の顧問に用事があるためだった。 「しかし移動教室の度に思うけど、こう遠いと動く歩道とか欲しくなるよな」 「(コクコク)」 「しかも理科棟ってFハウスの三階だろ?...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    さて。どうなることだろうね。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    ふうん。そんな風に、うまくいくのかしら。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    なんやかんや言うて、神様は民を見捨て切れんわけやな。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

  • 44

    神様は怒り、イスラエルの民を敵の手に任せた。イスラエルの民は窮地に立たされ、神様に生贄を捧げた。すると神様は士師たちを起こし、士師たちはイスラエルの民を助けた。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

  • 46

    もう一方のアシュトレトもバアルと同じだね。ウガリット神話の重要な女神だけれど、後世においてアスタロトという悪魔とされてしまう。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

  • 47

    かまわなくってよ!
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

  • 48

    解説ありがとう。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

  • 49

    「ビヨンデッタ」は、幻想小説家ジャック・カゾットの命名よ。なかなか可愛らしいから、普段はこの名前で通しているのね。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    ただ「ベルゼブブ」ってあんまり好きな響きではないの。だから「ベルゼビュート」とフランス語読みを使わせていただいているわ。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

  • 51

    そう。バアルとはこの私、魔王ベルゼブブのことなのよ!
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

  • 52

    は、はぇぇ!
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

  • 53

     表があるから裏があり、内を作るから外が生まれる。  哲学書や小説などでこの手の話は割とよく見られるが、いつも語られる選択肢は二択ばかり。表と裏があるなら、側面も生じることを忘れてはいけない。  そして横から見てこそ、その本質を見出せる場合もある。例えば硬貨ならギザ十だとか、五百円玉の側面にNIPPONと書いてあれば価値が上がる訳だ。 「それじゃ、またね」 「おう。じゃあな」 「お疲れ様」  今日俺は、葵と夢野の二人を第三者という立場から見た。  それなら彼女には、俺と阿久津は一体どういう風に見えているんだろう……そんなことを考えながら、新黒谷駅に着いた俺達は夢野と別れた。 「バッグ乗せるか?」 「気持ちだけ受け取っておくよ。ありがとう」  丁重に断った少女に合わせて、俺は自転車を押しながら隣を歩く。  この時間なら二人乗りをしてもバレない気がするが、そんな提案は絶対しない。阿久津が拒否するのは勿論だが、一番の理由はコイツの父親が警察官だからだ。 「ボクに合わせずとも、先に帰って構わないよ」 「時間が相当やばいなら走るぞ。親から連絡着てたんだろ?」 「気付いていたのかい?」 「まあな」 「ここまで過ぎたら、今更走ったところで大して変わらないさ。それに悪いのは帰る時間を伝え忘れて、連絡もせず親を心配させたボクの方だからね」  半ば開き直りつつ答える少女は、相変わらず達観している。  ただ今回は色々と試行錯誤があったのかもしれない。最初からそんな考えだったなら、トゥーンワールドや電車内であんな表情を浮かべたりはしないだろう。 「それより、キミに聞いておきたいことある」 「ん? 何だ?」 「キミは夢野君のことが好きなのかい?」 「…………は?」  相変わらずの、直球ストレートな質問。...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    この「バアル・ゼブル」という言葉を「バアル・ゼブブ」とユダヤ人は置き換えた。その意味は「蠅の王」または「糞の王」となる。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    「三つ目は米倉氏が誰かしらに告白して付き合うことだお」 「…………は?」  アキトに言われた第三の案は、正直いきなりすぎて意味がわからなかった。  第一の案で『嫌われるように振舞うこと』の引き合いに出されたのは理解できる。親しくなった友人に嫌われたら、夢野に限らず誰だって傷つくのは当然だ。  そう自分を誤魔化しながら、俺はアキトに問いかけた。 「ちょ、ちょっと待てって。それが夢……リリスにどう関係するんだよ?」 「さっき話した通り、自尊理論ですしおすし」  人は弱っていると恋に陥りやすくなる。  これまでのアキトの案は全て、傷心状態の夢野を葵が助ける筋書きだった。 「…………俺が誰かと付き合ったら、リリスが傷つくって言うのか?」 「相生氏の好感度がハート二個分なら、さしずめ米倉氏はハート四個分かと」 「ハンバーガー四個分の間違いだろ」 「お前がそう思うんならそうなんだろう。お前ん中ではな」  俺の冗談に対して、アキトらしい返しをされる。  せっかくコイツがヨンヨンとの時間を潰してまで相談に乗ってくれているのに、質問したこっちがふざけてどうするんだよ。失礼過ぎるだろ。 「悪い、続けてくれ」 「付け加えるなら拙者の予想だと先程話した二つ目。リリスが告白するのを待つケースについても、仮にされるとしたら恐らくは米倉氏になる希ガス」  そうは思わない。  …………いや、考えないようにしてきた。  確かに夢野は、俺に気があるような素振りを見せたことがある。  しかしそれは単なる思い上がりだと、何かある度に自分へ言い聞かせた。 「いくらなんでも飛躍し過ぎだっての」  そして予想通り彼女は、俺の過去を追いかけていたに過ぎない。  傷つき落ち込んでいた自分を助けてくれたヒーローを探していただけだ。...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

  • 57

    「ん? 何かやるのか?」 「パレードだね…………間に合うかな?」 「何がだ?」 「パレードが始まると道が封鎖されるんだよ。そうなるとトゥーンワールドに行くまで、大分遠回りをする羽目になるから面倒だと思ってね」 「ほー。まあ大丈夫だろ」  暗くなるにつれベンチにはイチャイチャするカップルが増えていく中、何やら人が集まり始めている道沿いを突っ切る形で通り抜ける。  やがて小さな子供向けの公園に到着するが、この時間だと遊んでいる子はいない。休憩場所にしている人が多い中で、俺は阿久津と共にベンチへ腰を下ろした。 「金欠なら夢野君のコンビニでバイトさせてもらったらどうだい?」 「バイトするにしても春休みだろうし、短期のつもりだからコンビニは無理だろ」 「ふむ。それならボクがやってみようかな」 「………………」  何だかんだで阿久津は気が利くし、割と観察力もあると思う。だが思ったことをハッキリ言い切るコイツが、接客をしているイメージが全く沸かない。 「何だいその目は? 無理だと思うなら、試してみるかい?」 「試すって?」 「キミが客をやればいい。ボクが店員をやろう」 「よし、じゃあいくぞ? ウィーン」 「ふっ」 「おいちょっと待て。何故に鼻で笑った?」 「すまない。まさか自動ドアから始められるとは思わなくてね」 「もう一回やるぞ? ウィーン」 「ありがとうございました」 「今入ってきたんだよっ!」 「さっき入ってきたなら、今は出て行ったんじゃないのかい?」  確かにそうかもしれないが……いや、やっぱ違うだろ。  コントみたいな前振りから始まった阿久津のコンビニ店員だが、実演されてみると思った以上に普通だった。ただ愛想が良いかと言われたら、正直微妙ではある。...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

  • 58

     空に浮かぶ雲の海を、ボートに乗って進みながらカシャッと一枚。月のウサギと会話する参加型ショーを楽しんだ後、入口にてウサ耳ポーズでパシャリと一枚。  俺や葵を経由したカチューシャが冬雪というベストポジションに収まると、カシャシャシャシャシャと連写。勿論、撮影者が誰かは言うまでもない。 「もし宇宙行ったら、ネックは何したい?」 「考えるのを止めたい」 「どこのカ○ズ様よっ?」  そして今乗っているアトラクションは宇宙二万光年。俺はカメラガール火水木と一緒に一人用……じゃなくて二人用のポッドで銀河の中を漂っていた。  他のアトラクションとは異なり完全な密室であり、前のポッドには葵と冬雪。後ろのポッドには阿久津と夢野が乗っているものの、中は見えず声も聞こえない。 「このアトラクションってカップル御用達なのよね」 「あー、密室だからか?」 「それだけじゃなくて、二人で窓を覗くから距離も近くなるじゃない? 途中で揺れたりもするから、ムードを盛り上げるにはピッタリって訳」 「ほー」  火水木のネズミースカイ雑学に感心こそするものの、実際に使う機会はないと思う。言った傍からポッドが揺れると、目の前にいる少女の胸も揺れた。 「でも狙った相手と一緒になれないなんて、アンタもオイオイも運がないわね」 「何の話だ?」 「誤魔化したところで、オイオイがユメノンを狙ってるのバレバレよ?」 「………………」 「ああ、安心して頂戴。映画のチケットを渡された時も話したけど、本人は未だに気付いてないみたいだから。ユメノンって自分のことだと鈍いのよね」  火水木の鈍いという指摘は、前に俺も言われたことがある。...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

  • 59

     寄り道をしながらも目的地へ到着した俺達は、恒例のグーチョキパーで分かれる。今回のチーム分けは俺と阿久津、夢野と冬雪、葵と火水木になった。 「…………お足元、お気を付けください…………」  夢野が選んだこのアトラクション、ゴーストアパートだけは他と違い、キャストが笑顔を見せずに静かな口調で目を伏せながら不気味に見送る。  その理由は名前の通り、ホラーなアトラクションであるため。本物の人間みたいな蝋人形が恐怖心を煽る暗闇の空間を、俺達は椅子型の乗り物に座り進んでいく。 「ここのアトラクションのキャストなら、キミでもできそうだね」 「おい、それはどういう意味だ?」 「…………? 物分かりが悪いと思ったら、櫻じゃなくてゴーストか」 「櫻だよっ!」  お化け屋敷的なシチュエーションで二人きり……誰がどう考えてもデートの定番なのに、隣に座る幼馴染は恐怖と無縁らしく全くもっていつも通りだった。  時折曲がり角になると、後ろにいる二人が視界の端に見える。夢野も割と平気そうで楽しんでいるが、冬雪はホラーが苦手なのか若干怯え気味だ。 「なあ阿久津。お前って怖いものとか、苦手なものとかないのか?」 「ボクだって苦手くらいあるさ」 「例えば?」 「櫻」 「それを平然と口にするお前がアトラクション以上に怖いっ!」 「冗談だよ。半分はね」  残り半分は本気らしい。コイツにバファ○ン飲ませたら、優しくなるかな? 「そんなことを聞いて、ボクが怖がっている姿でも見たいのかい?」 「見たい」 「ふむ、そうだね。数学の解答が変な値になると怖いよ」 「そういう怖いじゃなくてだな……」 「後は櫻が時間を守ったりしたら怖いかな。陶芸をしている姿を見ても怖くなるし、真面目に勉強しているなんてことがあったら怖過ぎて声も出ないね」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

  • 60

     タワー・オブ・ドリームで垂直落下した後はフードコートに立ち寄りつつ、俺達はファストパスを取ったアトラクション、スコールレーザーを楽しんできた。  雷雲の中を飛行船で進み、手にした光線銃で次々と現れる標的を撃つ。的は100点・1000点・5000点・10000点の四種類だ。 「しかし隣で見ていても、相生君は見事だったね」 「ぐ、偶然だよ」 「実力がなければ、あんな点数は取れないさ」  葵は謙遜しているが、実際のところ阿久津の言う通りある程度の腕がないと難しい。夢野にいいところを見せるため、事前に攻略サイトでも調べてたりしてな。 「ミズキも凄かったけど、何かコツとかってあるの?」 「最初のうちは自分の光を見失わないことね。後は高得点を狙うこと!」  やり慣れているにも拘らず葵とは僅差だったが、俺達の中ではトップの火水木がドヤ顔で語る。夢野は阿久津や冬雪と同程度で、どんぐりの背比べな点数だ。 「……だって、ヨネ」 「言ったろ冬雪。あれは俺の光線銃が不良品だったんだ。十回くらい打った後で光が見えなくなったし、どう考えても弾切れならぬ光線切れしたとしか思えん」 「……でもゴールした後に試したら、ちゃんと光ってた」 「じゃあ光線がジャムってたんだな」 「そんな訳ないでしょうが! 大人しく自分が下手だって認めなさいよ」  …………認めたくないものだな。自分自身の若さ故の過ちというものを。  陶芸室の輪ゴム鉄砲の一件もあったせいで、の○太君ほどじゃないが射的に自信を持って意気揚々と乗り込んだのが運の尽き。俺はまさかのダントツビリだった。 「前にシューティングが苦手な後輩と来たことがあるけれど、それでも四桁には届いていたよ。流石に900は中々に見られない点数だね」 「100点だけを九回とか、逆にどんだけ器用なのよアンタは」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

  • 61

     開園と同時に、ネズミースカイは戦場と化した。  アトラクションに優先して乗れるファストパスという名のチケットを巡り、並んでいた社会人や学生の一部が園内を全力疾走する。 「ああいう輩に限って、オタクはルールを守らないとか言うのよね」  この手の争いに参加してそうなイメージの火水木だが、意外にもそんなことはなかった。棒引きで判断した格闘タイプは間違いだったのかもしれない。  走っているのはコ○ッタとか使いそうな短パン小僧ならぬ半袖男。晴天とはいえ冬の海沿いにおいて明らかに服装を間違えており、きっと身体を温めたかったんだろう。 「駆け込み乗車もそうだけれど、余裕のない人は自分の都合しか考えないからね」 「何で俺の方を見る?」 「キミの時間ギリギリな行動は、早目に直しておくべきと思わないかい?」  呆れ半分に答える少女だが、こうして言われている間はまだ幸せだ。見限られた時なんて、指摘しても無駄だと注意すらされなくなるからな。  コミケの始発ダッシュばりな開園ダッシュの慌ただしさも、時間にして五分程度で終了し世界は平和に戻る。俺達も無事に目的のファストパスをゲットした。 「ねえミズキ。最初はどこ行くの?」 「そりゃ勿論――――」  ネズミーカチューシャを装着し、夢の国の住人となった眼鏡少女の後に続く。  人気のアトラクションはパスを使い、その待ち時間はそれぞれの行きたい場所へ順番で回る。そんな提案を開園前されており、まずは火水木セレクションだ。 「――――妊娠中のお客様、アルコールを飲まれているお客様、乗り物に酔いやすいお客様、規定の身長・年齢に達してないお客様はご利用頂けません」 「だってよ冬雪」 「……私、そこまで小さくない」 「寧ろ引っ掛かるとしたらキミの方じゃないかい?」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

  • 62

    「ふぁああ……はれ? ほにーふぁあああ」 「喋るのか欠伸するのか、どっちかにしろ」 「ふぁああ……っくしゅんっ!」  まさかのくしゃみという第三の選択肢で答えた梅は、ストーブの前で丸くなる。 「こんな朝から制服着てどこ行くの? また家出?」 「またって……一回やっただけで人を常習犯扱いするな」 「だって今日も学校休みなんでしょ?」 「言ってなかったか? ネズミースカイに行くんだよ」 「へー。ネズ…………ヴェエエエッ?」  波線みたいに細かった寝起きの目が、いきなりカッと見開いた。両親には伝えてあるが、どうやらマイシスターは聞いていなかったらしい。 「何でいきなり一人ネズミーっ?」 「何でいきなり一人扱いっ?」 「一人じゃないのっ? じゃあホモミーっ?」 「どんな略だよっ?」  コイツは一体兄を何だと思っているのか問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。 「まさかお兄ちゃん、本当にデート誘っちゃったとかっ?」 「んな訳あるか。前にボランティア行ったメンバーで行くんだよ」  正しくはアキトがOUTで火水木がINだが説明するのも面倒だし、オタクが腐女子に変わったところで大して問題ないから別にいいだろう。 「それならミナちゃんも一緒でしょ?」 「ああ」 「いいな~。梅も行く!」 「お前は学校だろうが」 「だって行きたいよ~。行かせて行かせて!」 「そういう誤解を招く発言をするな」  兄の遊びについてくる妹なんて、小学生くらいまでな気がする。まあコイツの場合は阿久津という偉大な先輩がいるからであって、別に俺は関係ないんだけどな。 「じゃあお土産にチョコクランチ買って!」 「確かにアレは美味いし俺も好きだけど、高いから却下だ」 「え~? バレンタインに黒い稲妻あげたじゃん!」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    「開いっ?」  帰りのホームルームの最中にも拘わらず、思わず声を出してしまった。  黒板の前で話をしていた担任のモジャモジャ組長、通称モジャ長がチラリとこちらを見るが、俺が慌てて視線を逸らすと淡々と話を再開する。 (マジか? マジでマジか?)  手にしていた電子辞書の画面を改めて確認した。  見間違いではなく『暗唱番号を入れてください』の表示が消えている。  苦節五日間……3000まで入力した後、逆から8000まで打ち込み、再び3001から順番に入れていたパスワードがようやく判明した瞬間だった。 (キターッ!)  この感動を今すぐにでも分かち合いたく、俺は隣にいる如月を見る。  少女は真面目にモジャ長の話を聞いているが、俺は凝視して呼びかけた。 (…………きこえますか……きこえますか……如月さん……米倉です……今……あなたの心に……直接……呼びかけています…………割と胸、ありますね……) 「っ!」  おお、意外と届くもんだな。  視線に気付いた如月はこちらを見るなりビクッと身を強張らせ、前髪で隠れている顔を再び正面に向ける……と、ここまではいつも通りだった。 「っ?」  時間差で俺が見せていた電子辞書に気付いたのか、再びこちらを向く少女。見事なまでの二度見を披露してくれたが、如月のこんなリアクション初めて見たな。 「っ! っ?」  おーおー、チラチラ見られてる見られてる。  普段視線を合わせてくれない如月がこうも俺を見てくると、何か新鮮だし物凄く面白い。流石はC―3家族姉妹部門の二位、父性を刺激させられるな。 (まだモジャ長の話は続きそうだな……)  とりあえず他人の辞書となれば、やることは一つだろう。...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    「じゃあ最初は『第一印象と違う男子&女子』からな。火水木と川村。渡辺と菅原。火水木と田中……と、これくらいの速さで言って大丈夫か?」 「……大丈夫」 「うし、続けるぞ。渡辺と川村。火水木と中川」 「太田黒と川村!」 「但馬と川村!」 「おいそこ! ややこしくなるから不正投票すんな!」  テスト勉強のために数人の生徒が残っている放課後の教室。俺が回収したアンケート用紙の名前を読み上げつつ集計し、冬雪も確認に正の字でカウントしていく。  そしてアキトはノートパソコンを弄り下準備を始め、如月がページの下書きを作成中。ちなみに今回作ったランキング項目は全部で九種類だ。 ・第一印象と違う男子&女子 ・ミスターC―3&ミスC―3(早く結婚しそうな人。未来の夫、嫁候補) ・C―3家族(父、母、兄弟、姉妹、ペットにするなら) ・彼女にしたい男子&彼氏にしたい女子 ・夢を実現させそうな男子&女子 ・謎が多い男子&女子 ・笑顔が素敵な男子&女子 ・世界に飛び立ちそうな男子&女子 ・面白い男子&女子  各項目に相応しい男女をそれぞれ一人ずつ。家族は父と兄弟に男子、母と姉妹に女子、ペットは男女問わずで、基本的には一枚に計21人の名前が書かれている。  項目が多くて面倒という意見もあったが、やはりこの手の企画は楽しみなクラスメイトが多い模様。何だかんだでアンケートの最中は盛り上がっていた。 「――――火水木と川村…………と、これで全部だ。どんな感じになった?」 「……こんな感じ」 「ん……特にズレもなさそうだな。アキト、お前が一位だぞ」 「粉バナナ! 米倉氏が拙者を陥れるために仕組んだバナナ!」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    「第一回!」 「チ、チキチキ……?」 「バレンタイン結果発表会だお!」 「「「イエーイ!」」」  毎度おなじみ、昼休みの教室。台詞だけ聞いたらノリノリっぽいが、台詞の打ち合わせがあったり、実際は割と小声だったりするのは言うまでもない。  まあクラスに残っている男子の中には火水木ばりに声がでかい奴もいるし、冬雪と如月が着替えに行っていない今なら別に問題ないけどな。 「エントリーナンバー一番。アキト選手の個数はっ?」 「七個だお」 「おおっと! これはいきなりのハイスコア! 優勝は決まりでしょうかっ?」 「す、凄いねアキト君」 「七個全てが天海氏の残りものですが何か?」 「「「…………」」」 「さあ気を取り直して、次の選手に参りましょう!」 「エントリーナンバー二番は米倉氏だお。一体何個貰ったので?」 「一応五個だな」 「リア充爆発しろ」 「さ、櫻君も凄いね」 「二個は家族からだし、誕生日効果付きで三個なんだぜ?」 「「「…………」」」 「さあ最後を飾るのはエントリーナンバー三番、葵選手ですっ!」 「ぶっちゃけこの結果発表、最初からこれが聞きたかっただけな希ガス」 「えっと……い、言わなきゃ駄目かな?」 「米倉氏。特別に許してあげてもいいのでは?」 「却下だ。チョコは甘くても、世の中はそんなに甘くないんだよ」 「誰うま」  そうだ……この世界は……残酷なんだ。  モジモジしながら視線を逸らす葵を見て、アキトが何やらぬるいことを抜かす。確かに可愛いは正義かもしれないが、男女平等パンチって知ってるか? 「さあ言え葵。ジャッジメントですの」 「に」 「死刑」 「えぇっ? な、何でっ? 僕まだ二しか言ってないよっ?」 「二個な訳ないだろうがっ! 二十個とかふざけんなっ!」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    「トントント~ン。幸せをお届けするデリバリー梅で~す」  夕食を終え風呂も済ませ、火水木のチョコを自室で美味しくいただいていた時のこと。珍しくドアをノックした梅だが、こちらの返事も待たずに入って来る。 「そういう誤解を招く発言をするな」 「はえ? お兄ちゃんにお届け物だけど、デリバリーって違ったっけ?」 「ん? いや、なら合ってるけど……何だそれ?」  パジャマ姿の梅は、掌サイズの小さな箱を持っていた。別に密林で注文した記憶はないし、コイツからのバレンタインは既に貰っている。  もし、仮に万が一あれがチョコだとしよう。そうすると我が家に直接届けに来るような相手は限られているが……ひょっとして、まさか阿久津が……? 「にっひっひ~。お兄ちゃん、このチョコ誰からだと思う?」 「何っ!? そいつをこっちに渡せ!」 「どうしよっかな~? よし、可哀想だから渡してあげよう」  無駄に勿体ぶった妹は、卒業証書でも渡すかの如く丁寧に差し出す。慌てて受け取った俺はリボンを解くと、シンプルな小さい箱の中を開いた。 『ハッピーバース&バレンティン❤ 櫻の心にデュークホームラン♪』 「梅ぇぇぇぇーっ!」 「はえ? どったのお兄ちゃん?」 「覚悟しろよ! この虫野郎っ!」 「エェーッ? お兄ちゃん酷っ! 桃姉からのバレンタイン届けてあげたのに、何で梅が虫野郎呼ばわりされなきゃいけないのっ?」 「姉貴からなら姉貴からと先に言えっ! お前なんかアレだっ! テントウムシだっ! ショウリョウバッタだっ! カタビロトゲトゲだっ!」 「何その最後の虫っ?」  せっかく諦めがついたのに、何故追い打ちをかけるのか。まあ阿久津がこんな手紙を添えてきたら、それこそショック・ショッカー・ショッケストだけどさ。 「あれ?...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    バアルはウガリット神話の神。バアル・ゼブル、つまり「崇高なるバアル」と呼ばれたんだ。バアルを異教の神一般として言うこともあるけれど、ここでは固有名詞だね。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    「そうそう。入試休みの二日間のどっちか、皆でネズミースカイ行かない?」  帰り支度を済ませ陶芸室の電気を消した後で、靴に履き替えていた火水木が思い出したかのようにそんなことを口にする。  アキトから前もって聞いていた情報通りの提案。入試休みのネズミーはアニメにおける水着回くらいに定番であり、ウチのクラスでもそんな話は出ていた。 「……金曜なら大丈夫」 「ボクは両方空いているね」 「ネックは?」 「ん? 空いてるけど、俺もか?」  こういう誘いにおける火水木の言う皆=夢野を含めた女子四人組であり、普段なら俺が入ることはない。一応この場では知らなかった体を装っておこう。  確かに入試休みのネズミーはお決まりだが、それは男のみや女のみのグループで行く場合。男女混合という話はハードルが高いのか滅多に聞かない。 「櫻を連れて行くのかい?」 「俺をパーティーに加えていると、たまに敵の攻撃を無効にするぜ!」 「RPGで割といるけれど、確率が低くて役に立たないイメージが強いね」 「そんな、酷い……」 「……敵って?」 「閉園後もネズミースカイに残ってると、いきなり背後から声がするんだ」 『ハハッ! どうしてこんな時間にゲストがいるのかな!』 「……ネズミーはそんなこと言わない」 「アタシも散弾銃持って追いかけてくるって聞いたことあるわね」 「……ネズミーはそんなことしない」 「二人とも、冗談はその辺にすべきだよ。夢の国をホラーワールドにしてどうするんだい? 音穏をからかって何かいいことでもあるのかい?」 「現実の厳しさを教えようと思った」 「ユッキーが良い反応するからつい」 「まあ今回の企画がパーになってもボクは別に構わないけれどね」 「「すいませんでした」」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    「やす――――」 「「!」」  阿久津も動いていたが、僅かに俺の方が早い。そりゃ『札を取る』にはブレーキも必要だが『札を吹き飛ばす』ならアクセル全開で済むからな。  一々取りに行ったり並べ直したりするのは面倒だが、目の前の少女にも札を飛ばして貰うためにはこの方法で追い詰めるのが一番効く……筈だった。 「少しキミを甘く見ていたよ」 「そりゃどうも」 「普段からこれくらい本気の本気を見せてくれると助かるね」 「たまに見せるから本気の本気なんだよ」  高校受験でもそうだったけど、俺は基本的に追い上げ型だからな。  阿久津側の札を取ったため、自陣に残っている印象の薄い札を選んで渡す。この中だとさっき阿久津から渡された『ものやおもふとひとのとふまで』か。 「そろそろお前も本気を見せろよ(スカートの中も見せろよ)」 「キミと違って、ボクは最初から全力だよ」 「最初だけの間違いだろ? これが飛ばすための並べ方だって言ったのはお前だぞ?(そして冬雪が暗黒空間の素晴らしさを教えてくれたんだぞ?)」 「今のボクが出せる全力はこれが限界さ。確かに競技かるたは基本的に飛ばすことが前提だけれど、無理して飛ばす必要もないじゃないか」 「飛ばしてくれなきゃ困るんだよ!(立ってくれなきゃ困るんだよ!)」  半ば心の声が漏れているが、話を切り出すのは今しかない。  ようやく五分五分にまで持ち込み今の一枚を俺が取ったことで、残り枚数は三枚VS四枚と逆転。自分でもここまで追い詰めたことに驚いている。  こんなことなら賭けの条件を『負けた方が買った方の言うことを何でも一つ聞く』とかにしておけば良かった。まあそんな提案、絶対できないけどさ。 「困ると言われても、怪我をされる方が困るけれどね」 「そんなこと気にすんなっての」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    「――――ってことで、昔はブサイクだろうと和歌が上手けりゃモテたのよ。誰うまな掛け言葉にしたり、相手をホイホイ釣るような詩を作ったり」 「……例えば?」 「そうね…………適当に今っぽくするとこんな感じよ」  音穏さん、俺と君は出会うべきじゃなかった……あれから君に会えないかとばかり考えて、毎日胸が痛くなるんだ。これが恋ってやつなのかな? 「……病院で診てもらうべき」 「辛辣っ! ユッキーって優しいかと思ったら、結構毒舌なのね」 「……本当に病気かもしれない」 「優しすぎいっ! 違うからっ! 病気とかじゃないからっ! いや恋の病っていう意味じゃ病気だけど、治せるのは医者じゃなくてユッキーだからっ!」  発症したのは冬雪が原因だけどな。  しかも下手な返事をすれば余計に悪化する始末。結局この手の恋心なんてのは、想い続けている間が誰も不幸にならない一番の平和だと思う。 「それで、ユッキー的にはこういう男ってどうよ?」 「……ちょっとキザかも」 「ってか、ぶっちゃけウザくないか?」 「そう? アタシは別に有りだと思うけど」 「お前の場合、男から男への手紙に脳内変換してるだろ?」 「と、とにかく平安とか鎌倉時代のセンスに文句言われても、当時はこれで惚れるちょろインが多かったんだから仕方ないじゃない!」  現代も・そんな時代に・なればいい(櫻、心の一句)  珍しくボロを出した火水木と俺が場所を交代して、決勝戦と三位決定戦の準備は完了。札を並べ終えた今は位置を覚える時間だが、隣は雑談タイムに入っていた。 「……逆は?」 「どういうこと?」 「……女から男の場合」 「ああ、そういうことね。じゃあメール風で、こんな感じじゃない?」  久し振りにメールしちゃった。櫻君、元気してる?...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

  • 71

    「さて、それじゃ早速始めるわよっ!」 「何をだい?」 「百人一首に決まってるじゃない! ネック、ろくろ移動させなさい」 「おいおい、床でやるのかよ? 机で良くないか?」 「こういうのは雰囲気が大事でしょ?」  陶芸室で百人一首という時点で雰囲気も何もない。茶道部や華道部にお邪魔して畳の上でやるなら話は別だが、そんな真似ができるなら最初からSOS団なり隣人部なり奉仕部を設立していただろう。  レジャーに行く訳でもないのに、大きなレジャーシートを取り出す火水木。そのスペースを確保すべく、戻すのに苦労しない程度で重いろくろを動かす。 「じゃんじゃじゃーん!」 「何で二組も持ってるんだよ?」 「困った時にはおいでよー♪ ああー火水木文具ー♪」 「テーマソングあんのっ?」 「ある訳ないでしょ。即興よ即興」  その割にはCMのサウンドロゴみたいで、普通に完成度高かったな。 「あれやるわよ! グーパーグーパー……何だっけ?」 「「グーパーグーパーグゥーパァだよ」」 「……ハモった」 「はいはい。グーパーグーパーグゥーパァね」  ここで百人一首というものについて、軽く確認をしておこう。  単純なかるたの一種ではあるが、普通の違う点は読み手が上の句を読み上げるのに対し、俺達はそれに繋がる下の句を取らなければならない。  そして百人一首には色々な遊び方があるが、今回は競技かるたのルール。百枚全てを使うのではなく、半分の五十枚を互いに二十五枚ずつ分けて並べてある。 「先生、今の時期は忙しいんですけどねえ」 「そう言わずに、青春に付き合ってよイトセン」 「青春なら仕方ありませんねえ。それでは始めますよ」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

  • 72

    「……ヨネ」 「ん?」 「……部活」  数学・英語の後で昼休憩を挟み国語という三科目を終え放課後になると、今日は初期の席位置だったにも拘わらず冬雪が俺の元へやってくる。  今となっては習慣づいており違和感はないが、逆にこれだけ親しくなっているからこそチョコが貰える……そんな風に考えていた時期が俺にもありました。 「なあ冬雪」 「……何?」  部活に行く前に、何か忘れてないか?  そんな質問をしようとしたが、首を傾げた少女を見て諦める。頭にバの付くやつとかヒントを与えて、バルスとか言われ日には俺が破滅するわ。 「いや……その、顔に寝てた痕が残ってるぞ」 「……っ?」 「悪い、冗談だ冗談。行くか」 「……ヨネ、意地悪」  まあ最後の国語で息絶えてた姿は、後ろから見てたけどな。  普段が割と無表情なだけに、冬雪が時折見せる羞恥の姿は何ともそそられる。程良い身長差から頭を撫でたくなるが、同級生相手には中々できない。 「……模試、難しかった」 「それな。何が一番難しかったよ?」 「……数学」  周囲の反応は冬雪と同じだったが、俺の中では一番できていたりする。難易度的には、やっぱ苦手教科になりつつある英語が辛かったか。  しかし評論も小説も古文も漢文も意味不明で、わろしって感じだった国語も微妙。作者の気持ちを選べとか、知らんがなと激しく突っ込みたい。 「……ヨネは何が一番難しかった?」 「志望大学記入するやつ」 「……そこ?」 「いやマジで。東大とか書いたんだぜ?」 「……行くの?」 「行かねーよっ! ってか行けねーよっ!」  第四希望まで枠を用意されても、こちとら知ってる大学なんてほとんどない。ジーマーチなんて言葉も、黒光りする害虫の行進曲と勘違いしてたからな。...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

  • 73

    「誕生日うめでとうお兄ちゃん! 梅から愛のプレゼントだよ!」 「そういう誤解を招く発言をするな」 「そしてそしてバレンタイン! 梅の大好きなキノコだよ!」 「連続でそういう誤解を招く発言をするな」 「別に誤解じゃないもん。梅が大好きなのは~、お兄ちゃんの……キ・ノ・コ❤」 「お、おいっ! 梅っ?」 「わっ? お兄ちゃんの、凄い硬くなってる……梅の口に入るかな?」 「何してんだよお前っ?」 「いただきま~す。あ~~~んむっ!」 「――――的なことがあったのでほぶっ?」 「言いたいことは色々あるが、とりあえず破壊するわ」 「ちょまっ! 正直スマンかったっ! スマンかったからそれ以上いけないっ! 折れるっ! 最高のパートナーである拙者の右腕が折れるっ!」 「じゃあこっち」 「指ぃいいいいっ! ちょっ! マジ勘弁っ! ギブギブギブッ!」  本日は二月十四日。異性に縁のない男は『煮干しの日』だの『ふんどしの日』だの現実から逃避するが、どう足掻いても世間がバレンタインなのは変わらない。  天気は見事に青空が広がる快晴であり、これだけ良い天気なら通学途中に所々で残っていた雪も全て溶けてしまいそうだ。  そんな清々しい朝の教室で、俺は爽やかにアキトの関節を極めていた。 「さ、櫻君、落ち着いてっ!」 「鳩尾《みぞおち》突いて? よしわかった」 「違ふぼっ! ちがっはうっ! ちがぁああああっ!」 「血が? 安心しろアキト。関節技に血は出ないぞ」 「れ、冷静に話し合おうよっ?」 「ああ、そうだな。来世に話し合おう」 「えぇっ? 微妙に間違ってるよ櫻君っ! まずは怒りを鎮めてっ!」 「そうだな。錨を付けて海に沈めたい気分だ」 「ええぇっ?」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

  • 74

     今日の七限は久々に委員会活動があった。  俺が所属しているのは、屋代学園の生徒会誌を作成する編集委員。入学当初に手軽そうと判断して選んだが、予想通り楽で今までの活動は僅か二回だけである。 「――――以上で本日の委員会を終わりにします」  前回の会議で決まったのはページ割りと作成上の注意点。そして今回の会議では編集方針を決め、来週までにクラスのページを提出するようにとのことだった。  そんな話を耳に入れつつ、黙々と電子辞書をタイピング。一応1231まで試し終わったがロックは開かず、何かしらの日付という線はないらしい。 「如月さん、何かやりたい企画とかある?」 「(フルフル)」 「じゃあ俺が適当に決めちゃっていいか?」 「(コクコク)」  編集委員のパートナーである如月に色々と尋ねてみるが、彼女は相変わらず首を振るだけ。きっと前世は扇風機だったに違いない。 「なら月曜……は振替で休みだから、火曜に何かしらアンケート取って放課後に集計しよう。ページまとめは頼んでもいい?」 「(コクコク)」 「うし、そんじゃそんな感じで。お疲れさん」  口を小さく開いたように見えたが、如月の声は聞こえなかった。冬雪より身長は低いが発育は良いから、痴漢とか遭った際に大丈夫なのか不安になるな。  時間も中途半端なので、今日は部活に寄らず家へ帰ることにする。 (それにしても、ネズミースカイか……)  入るだけで5000円ってのは、俺の財布事情を考えると正直キツイ。今はまだお年玉が残っているが、春休みにバイトの一つでもやるべきか。  でもコンビニは変な客に絡まれそうだし、飲食店は変な客に絡まれそうだし、ガソリンスタンドとかカラオケの店員は変な客に絡まれそうだ。 「フーン。フーフーフン。タンタンタンタンフンフンフン」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

  • 75

     二月十四日が土曜や日曜といった休日である場合、俺達高校生にとって直前の金曜や直後の月曜が禁断のXデーとなるのは言うまでもない。  しかし今年は幸か不幸か模試があるため、明日は土曜にも拘わらず登校日。そのため今日は実に平和な十三日の金曜日を迎えていた。 「……ヨネ」 「ん?」  昼食に買ったコスパの良いスティックパンを早々に食べ終え、アキトのコンビニ弁当と葵家の手作り弁当をボーっと眺めていると、冬雪から声を掛けられる。  教室で話しかけてくる機会は相変わらず少ないので珍しい。ついでに言えば普段は弁当なのに、今日は持ってくるのを忘れたのか購買のパンを食べていた。 「……これ、外せる?」 「外せって、どこをだよ?」  てっきり知恵の輪でも出してくるのかと思いきや、差し出されたのは電子辞書。外す場所なんて電池の蓋くらいしかない文明の利器だが、中を開いて理解する。 『暗唱番号を入れてください』 「ああ、つまりロックを外せと?」 「……(コクリ)」 「何で俺に頼むんだ?」 「……数学得意だから?」  疑問に疑問で返さないでほしい。パンを抱えつつ首を傾げる姿が可愛いから許すけど、同じポーズを横にいるガラオタがやったら眼鏡をカチ割るところだ。  そもそも解錠に数学は関係なく、わかるのは0000~9999まで一万通りあることくらい。とりあえず適当に入力してみるが、当然解除される筈もなかった。 「冬雪の誕生日は?」 「……二月十八日」 「へー。もうすぐか」  0218を入力してみるもハズレ……ってか俺の誕生日と四日違いなんだな。 「……何で誕生日?」 「暗唱番号に自分の誕生日って定番だろ?」 「……それ、私のじゃない」 「ん? じゃあ誰のだ?」 「……ルー」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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     ――ケンちゃんの作文――  ある日、ケンちゃんの学校で作文の宿題が出ました。  ケンちゃんはお母さんに作文を手伝ってもらおうと「お母さん、作文手伝ってよ」とせがみましたが「後でね」と言われました。  なので作文に「後でね」と書いておきました。  次はお父さんに「お父さん、作文って知ってる?」と問うと「おう。あったりめぇじゃねぇか」と威勢の良い答えが返ってきました。  なので作文に「おう。あったりめぇじゃねぇか」と書いておきました。  今度は誰に聞こうか悩んでいると、弟がアンパンマ○のビデオを見て「アンパ○マーン」と興奮していました。  なので作文に「ア○パンマーン」と書いておきました。  するとお兄ちゃんが帰って来たので「お兄ちゃん、作文教えて」と言いましたが、お兄ちゃんは電話中で「バイクで行くぜ!」と友達に話していました。  なので作文に「バイクで行くぜ!」と書いておきました。  次の日は作文の発表でした。 「ではケンジ君。作文を読んでみてください」 「後でね」 「ふざけているんですか?」 「おう。あったりめぇじゃねぇか」 「先生を誰だと思っているんですっ?」 「ア○パンマーン」 「後で職員室に来なさいっ!」 「バイクで行くぜ!」  時期は小学四年生の二月末。この頃になってくると割と記憶も残っており、こんな創作話を誰もが語っていたのを覚えている。  話し手によっては「学校が終わったらお家に伺います」からの「クッキー焼いて待ってるわ」と返す姉も登場するが、ビデオという辺りが地味に懐かしい。 「何度聞いても面白いね」  そんな話をリクエストした幼馴染は、笑い過ぎて出た涙を拭う。...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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     毎度おなじみ、放課後の陶芸部。  水が冷たい冬は陶芸をすることも少なく、部室に集まってはトランプなり雑談なり勉強をする毎日だが、今日の活動はそのいずれでもない。 「雪ー雪ーっ!」  火水木天海《ひみずきあまみ》、ちちうしポ○モン。楽器を奏でるのが得意で、その音色にはインド像も感動する。表面は普通だが、中身は腐っている。声がでかい。 「ありのーままのーっ♪」  窓の外で雪に喜び、眼鏡少女は盛大に踊り出す。仮に映画にするなら『馬鹿と雪の女王』ってとこだが、アイツ俺より頭良いんだよな。  草・格闘タイプで氷弱点の癖に、何でそんな元気なのか……きっと特性で『あついしぼう』があるに違いない。まあ流石にこれを口にしたら殺されるけど。 「……」  その傍らでは火水木の発言をユッキーと誤認識し、ちょくちょく反応している冬雪の姿。岩・氷タイプだけあって寒さには強く、雪を見て創作意欲が湧いたのか少女は何かを作り始めていた。勿論特性は『テクニシャン』だろう。 「ネックもツッキーも早く来なさいよーっ!」 「ほら、呼ばれてるぞ」 「キミは行かないのかい?」 「悪いが俺は雪アレルギーなんだ。触ったら死ぬ」 「それなら今すぐ雪を持ってこよう」  …………悪・毒タイプで氷等倍なコイツの特性は『どくのトゲ』だな。  実際には口だけで席を立つこともなく、阿久津は数学の問題集を淡々と解く。俺はその向かいでプリントへ赤シートをかざし、百人一首の上の句と下の句を確認中。二学期の期末は全体的に失敗したので、三学期で取り返す必要があった。 「キミはこたつで丸くなるより、喜んで庭を駆け回るタイプだと思ったけれどね」 「俺は犬でも猫でもないっての。ちなみにそれ、二番の歌詞な」 「一番はどんな歌詞なんだい?」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    「毎日毎日、よく飽きずにやってるよな」  日課の如くソーシャルゲーム『刀っ娘ラブ』に夢中な友人A、火水木明釷《ひみずき あきと》に尋ねると、年明けは太っていたが一ヶ月半でガリガリに戻った青年は眼鏡を光らせつつ応える。 「そう言われましても、拙者の生きがいですが何か」 「じゃあサービス終了したら死ぬのか」 「ちょまっ! ちゃんとヨンヨンは生き続けるお!」  スマホを操作したガラオタが見せてきたのは、彼の愛する銀髪少女が踊る動画。本家ではなく有志によって3Dモデリングされたキャラは、中々に完成度が高く可愛いと思う。 「どう見ても天使です。本当にありがとうございました」 「こ、こういうのって凄いけど、作るの大変そうだね」 「拙者も最近3Dの勉強がてら導入してみたものの、スカートが暴走するわ色々とめりこむわで、現状パンツ眺めるくらいしか扱えてない件」 「そ、そうなんだ……」  質問に対して反応しにくい返事をされた友人B、相変わらず男の娘っぽい相生葵《あいおいあおい》は、苦笑いを浮かべつつ弁当箱を片付け始める。  席替えしても三人で昼飯を食べる習慣は変わらない。以前は席位置の関係から前にアキトで横が葵だったのが、今は前に葵で横がアキトになっただけだ。 「「……」」  変化らしい変化としては傍に二人の無口女子グループがいるくらいだが、これといって関わることもない。まあパンツ発言してる会話に入られても困るけどな。  他の男子連中は栄養補給を終えるなり、外で盛大にギャーギャー騒ぎながら雪合戦の真っ最中。そんないかにもな男子高校生を、葵がボーっと眺めていた。 「何なら混ざりに行ったらどうだ?」 「ぼ、僕、寒いの苦手だから」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

  • 79

    ん?ビヨンデッタは別に崇められてへんやろ?
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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     灰色の曇り空から、しんしんと舞い降りる白い結晶。  本来一週間前に行われた節分はその名の通り、季節を分けるという意味の行事。しかし立春が過ぎたにも拘わらず、本日の天気は珍しいことに雪だった。  そうなると当然いつも通りに自転車通学という訳にもいかない。気持ち的には翼を奪われた天使の気分……なんて、目の前に広がる美しい銀世界と合わせてロマンチックな表現をしてみる。 『ガチャ』  家を出るなりイヤホンコードの絡みを解きつつ、MP3プレイヤーを操作しながら数歩歩き出した際に、はす向かいの家の扉が開く音がした。  振り向いてみれば、仮に先程のイメージを話したら「天使? テントウムシの間違いじゃないかい?」なんてコメントを返しそうな幼馴染が傘を差している。 「よう」 「やあ。おはよう」  外気に触れる素肌の面積を少しでも減らすため、手袋とマフラーだけではなく耳当ても付けている少女。ただしスカートの下から伸びる細い脚だけはコートでも守りきれず、黒タイツのみと防御が薄い。  そんな阿久津水無月《あくつみなづき》が積雪の上を歩いてくる姿を眺めつつ、俺は耳に入れかけたイヤホンを外すとポケットに入れた。 「どうせ降るなら、祝日だった昨日に降ってほしかったよ」 「それはそれで路面凍結して、結局俺は電車登校だけどな」 「その電車がまともに動いているかどうかさ」  家を出る前に確認した限り、遅延しているものの運休はしていない。そして屋代に繋がる五つの路線が一つでも動いている以上、休校しないのが俺達の高校だ。  人の足跡や自転車が通った車輪の跡が残る道を、共に駅まで歩き始める。今日に限っては騒々しく起こしに来た妹に感謝すべきかもしれないな。 「しかしキミにしては、珍しく早い登校だね」...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

  • 81

    草どもがしょうこりもなく、わたくしを崇め始めましたわね。節操の無いこと。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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     表があるから裏があり、内を作るから外が「鬼は外っ!」生まれる。  哲学書や小説などで「鬼は外っ!」この手の話は割とよく見られ「鬼は外っ!」るが……すまない。雑学の途中だが少しばかり待ってほしい。 「鬼は外っ!」 「ええいっ! 鬱陶しいっ!」  この俺、米倉櫻《よねくらさくら》に向けて一粒ずつ飛んでくる豆。投げられているならまだ良いが、デコピンの要領で勢いよく射出されているため普通に痛い。  妹の米倉梅《よねくらうめ》が散らかした豆を回収もとい口へ放り込む。コイツは豆撒きを『合法的に傷害行為を行える行事』と勘違いしているんじゃないだろうか。 「あっ! お兄ちゃん、梅のお豆さん食べた~っ!」 「そういう誤解を招く発言をするな」 「はえ? それより早く豆撒きしようよ~」  そう、世の中には記念日が山ほどある。  例えば今日、2月3日が節分なのは誰もが知っている記念日だ。しかし大豆の日や乳酸菌の日、のり巻きの日でもあることを知る人は少ないだろう。  こうした記念日は企業が制定したものだが、実は2025年以降は節分が2月2日になる年があったり「鬼は外っ!」……すまん。ちょっと豆撒いてくるわ。 「あんまり遠くに撒いちゃ駄目だからね」 「は~い!」  母上の指示を受け、豆の入った箱を片手に玄関へ。流石にこの年になると鬼を相手に投げる様な真似はせず、家の庭と入り口周辺に軽く撒く程度だ。 「鬼は~外~っ!」 「福はー内ー」 「鬼ちゃ~ん外~っ!」 「ん?」 「まくの~うち~っ!」 「おい」  梅の身体が∞の字を描く……が、何かメトロノームみたいだな。  第二声が可愛くちゃん付けしたのか「お兄ちゃん外」と言ったのか疑惑の判定を残しつつ、玄関を終えるとリビングに戻り雨戸を開けてから庭へ豆を撒く。...
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    81|作品名俺の彼女が120円だった件作者sutano

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    ともあれ、またバアルの名前が出てきたね。アシュトレトも有名な神の名だよ。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    それ、僕も参加しなきゃダメかな……。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    なんだ、そんなことでしたの。でしたらすぐにでも戦場でお会いできましたわね。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    いや、ほら、うちって天使の総大将やろ?なんか悪魔と戦う準備せなあかんくて忙しかったんや。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    わたくし、お姉さまに会いたくてずっと探していましたのよ。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    お久しぶりですわ、お姉さま。今までどこにいらしてたの?
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    ビ、ビヨンデッタ……!?
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    浮気者には死を、ですわ。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    そしていつも通り、夫である神の怒りに触れるわけだ。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    なんちゅうか。こいつらしょっちゅう浮気しとんな。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    ヨシュアの死後、新たな世代となり、過去の様々なことが忘れられた。あろうことかイスラエルの民はバアルとアシュトレトを崇拝し、神様の怒りに触れた。
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    63|作品名天使と悪魔の聖書漫談作者ashikabi

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    *ここで「コメントの☆をカウントする」のが不可能と確定したので、プレイヤーは一度エピソードを遡ってグッドカード投票を行いました。
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    「約束です。納得できるように説明してください」  僕は教室の壁掛け時計を見て言う。十一時半を指していた。 「ああ。約束だしな」  不良なロリババア教師は白衣を羽織る。  ポケットから錠剤を取り出し。 「嬢ちゃん、のじゃロリ」  小夜さんと美紅ちゃんに呼びかける。 「ヒナちゃん、なんの用事かな?」  子どもを相手にする口調の小夜さん。  九十九先生は一瞬だけ顔をしかめた後、にこにこと笑う。逆に怖い。  ロリ先生はミネラルウォーターのペットボトルを床に置く。中身はほとんど残っていない。蓋を外し。 「君たちの未来のためだ。ちょっとだけ我慢してくれ」  そう言うと、九十九先生は小夜さんの口に手を突っ込む。 「はぐっ」  呻いた小夜さんの顎を上に向け、ペットボトルを蹴り上げた。  白衣がパサッと音を立て、ミニスカートもひらり。ほっそりとした太ももの上に、クマさんがいた。  僕は目をそらす。  天井近くに上がったペットボトルが反転するのを目撃。  唖然としていたら、ボトルは小夜さんの口に吸い込まれていく。  ゴク、ゴク。  小夜さんの喉が動いた。  少し飲んだ後、ペットボトルは床を転がった。幸い、量が少なかったので、わずかに濡れただけである。  なに、これ?  プロのサッカー選手が、ネタ動画を投稿してるみたい。 「さあ、のじゃロリよ。ああなりたくなかったら、てめえで飲め」  美紅ちゃんは素直に言うことを聞く。自分で謎の錠剤を飲んだ。  って、九十九先生が小夜さんにしたの意趣返しなんじゃ。  カワイイ顔して怖ろしい人だ。 「そろそろだな。むっつり君よ。ロリババア病の真の恐ろしさを目蓋に焼き付けやがれ」  担任が乱暴に言い終えた時である。...
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    *当初予定していた「コメントに入った☆をカウントする」が不可能と判明したため、評価方法を変更しています。
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     電池カバーが外された時計には、電池そのものが入っていなかった。 「……電池がなかったから止まってたんですね」 「どうやろうか……。でも、試す価値はあると思いませんか?」 「じゃあ私、部屋から取ってきますね。電池」  山田のうなずきを確認して、花子は一旦、巧の部屋を出る。  ひとりきりで廊下に出ると、静けさが肌にまとわりついてきた。山田がいるからこそ普通にしていられるが、先ほどカウンターで受けた電話の内容は、思った以上に胸に刺さっていた。  この世界にいれば、これは当たり前として起こり得ることなのだろう。  そして山田は、こういう経験を何度もしてきたのだろう。  例えようのないもどかしさと切なさに花子は小さく息をついて、自室へと向かった。  電池を手に巧の部屋に再び戻った花子は、一鬼からもらった二本の電池を時計に嵌《は》めこんだ。  しかし、山田と一緒に覗いた文字盤の針は、まったく動く気配がない。 「動かない、ですね……」 「電池の出番は、ここじゃなかったんやろうか」  ふたりで顔を見合わせた次の瞬間、花子の手のなかで、いきなり時計がアラーム音を鳴り響かせた。 「な、なに⁉」  大きな音で「ジリリリリ」と鳴っているベルの音に驚いたが、ふと、目覚まし設定はオフなことに気づく。 「……なんで鳴るの?」 「しかも、目覚ましの時間は六時四十分やけん、この時計が指しとう時間になるはずがないですね」  止まったままの時計が、アラームを鳴らす。不可解極まりない状態に、花子は眉を寄せた。  そのとき突然、時計の針が勢いよくぐるぐると回り始めた。 「! 山田さん、パスッ」 「パスって花ちゃん、ボールみたいに」  くすくすと笑いながら時計を受け取った山田は、アラームを響かせながら針を回す時計をのんびりと眺める。...
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    うん、つまらない大人にはならなかった 「ガラスのジェネレーション」の意味 一般的には「ガラスのように壊れやすい」 という意味だと思うが僕は 「ガラス張り=隠すことなく」という意味を込めて この曲で締めくくることにした このサイトで書き始めた頃 自分のようなおっさん世代は少ないのだと 感じた。一話でやめるかなと。 でも文字という手段を持っていろんな世代が交流できればいいだ。 世代を隔てる壁など要らない。 自らが心理的に壁を設けてしまってはいけない。 そんな壁はあったとしてもガラスのように透明で壊れやすいもの。 みんなの心の持ちようで壊せるものだ。
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     息を切らせて、海堂と近村に視線を向ける風馬さん。海堂は目と口をぽっかりと開けながら、目の前の風馬さんを見ていた。  それは僕にとっても、信じられない光景だった。 「な、何よ、スズミ。いきなり叫んで……」  風馬さんは何も言わない。だけど、周囲の空気が変わったのは間違いなかった。  海堂は気を取り直したのか、友人に向かって声を開けた。 「スズミ、あんた卯花に同情しろっていうの? あたし、あんたのためを思っていったのよ? わかるでしょ?」  一方風馬さんはハンカチで汗を拭うと、その訴えかけるような瞳を海堂に向けていた。 「ひどいよ、ゆかちゃん。人をいじめるなんて」 「いじめ? そんなつもりはないけど。あたしは事実を言っただけ」 「卯花くん、嫌がってるじゃない」 「は? 自業自得でしょ? 事実なんだから当たり前じゃないの」 「そうかな。卯花くんはゆかちゃんに何も悪いことしてないよ?」 「してるわよ! あたしたちの前にいること自体悪いことなの!」  次第に海堂の口調が荒くなる。海堂の口から放たれる一撃は重いけど、風馬さんがいるからか衝撃は思ったより弱かった。  風馬さんは一度目を閉じると、 「ごめん、ゆかちゃん。私ずっとゆかちゃんを友達だって思ってた。でも、いじめるなんて信じられない」 「な、なによ、スズミ……」  海堂の威勢は一時的に弱くなる。 「今すぐ卯花くんに謝って」 「は? あたしがあのキモイ男に?」 「そう。ゆかちゃんの言葉で」 「……」    今の僕にとって、風馬さんは救世主のように見えた。僕の心は自然と風馬さんに引き付けられていた。そして、いつの間にか彼女を応援していた。  海堂は下唇を噛みながら地面に顔を向けていた。異変を感じたのか、近村が海堂の顔をのぞき込む。...
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    2|作品名グッバイ、マイサマー作者irohadiary

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     いったい、いくつの恐怖の響きが聞こえただろうか――。  メイシアは、頭上からの銃声に驚いて天井を見上げた。数多の赤い光が飛び散り、それらはすぐに白い煙に取って代わられた。  何が起きたのか。  彼女が周囲を見渡そうとしたとき、「姉様、駄目!」という鋭いハスキーボイスと共に、飛び掛かられるようにして両目が塞がれた。  背後から包み込むような気配は、異母弟ハオリュウのもの。けれど、かつて背伸びをしながら「だーれだ?」とメイシアに目隠しをしてきた彼は、彼女の耳の高さで荒い呼気を吐いていた。  瞼に、汗ばんだ掌を感じる。骨ばった指からは、幼き日に手を繋いで歩いたときの柔らかな面影は消えていた。硬く触れる金属の感触は、当主の指輪――。 「姉様、見ちゃ駄目だよ。こういうのは全部、僕の役目だ。姉様は綺麗でいて……」  祈るような声は決して低くはないけれど、記憶に残る音よりも、ずっとずっと深い。 「メイシア!」  むせ返るような火薬の臭いの向こうから、必死のテノールが近づいてきた。 「ルイフォン!」  思わず体を動かしたメイシアを、ハオリュウはぎゅっと捕まえて離さない。 「ハオリュウ、離して」 「嫌だ」 「何が起きたの? どうなっているの!?」  メイシアは細い肩を震わせていた。  さっきまでは聞こえていた罵声と呻きが、聞こえなくなっていた。煙った重い空気がだんだんと薄くなり、つんとした血の臭いが鼻腔を突く。  ハオリュウに問いかけながらも、メイシアは閉ざされた視界の中で悟っていた。  天井からの発砲は、この執務室の主《あるじ》を守るためのもの。銃声の直前にイーレオの声が聞こえたことが、それを裏付けている。  だから、皆、無事。鷹刀一族の人たちは無事。  ……偽の警察隊員たちは――異母弟が頑なに彼女を離さないのが、何よりの証拠だ。...
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キャラランキング

  • 1位

    どんぶり大盛り白米くん。新潟県産最高級コシヒカリ。手足がないデザインなのでホバー飛行する。じめんわざは無効。

  • 2位

    ■炎の厄災『イゴール・バスカヴィル』初登場:第十四話 剣聖結界 ―蒼い風と炎の厄災―...

  • 3位

    白い覆面 … 白い烏帽子と覆面に白装束の集団。

  • 4位

    こころちゃん … 主人公のお友達。

  • 5位

    まひるちゃん … 本篇の主人公。16歳。女の子。

  • 6位

    笹川 由乃(ささがわ ゆの)『小夜子さんのウキウキ修羅場ライフ』の主人公

  • 7位

    笹川 小夜子(ささがわ さよこ)『小夜子さんのウキウキ修羅場ライフ』のヒロイン

  • 8位

    笹川 由乃(ささがわ...

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