公式お知らせ
超一流原作者・樹林伸先生に聞いた『MANGA オーディション〜樹林伸プロデュース〜』#2 (2021.04.22) 総合
『MANGA オーディション〜樹林伸プロデュース〜』
1次審査通過者から学ぶ!イラストテクニック
「金田一少年の事件簿」「探偵学園Q」「サイコメトラーEIJI」「BLOODY MONDAY」――。数々のメガヒット作品を手掛けた樹林伸先生があなたのために原作を書き下ろし、そして連載&単行本化が確約されている夢のようなオーディションプロジェクト『MANGAオーディション~樹林伸プロデュース~』。
最初の関門である第1次審査「イラスト審査」では、応募総数109作品の中から27作品が通過しました。「皆さん上手すぎて困りましたよ」と、新しい才能との出会いを嬉しそうに語る樹林先生に今回の審査で評価したポイントや通過者に今後期待することを伺いました。
実際に1次審査を通過したイラストから学ぶキャラクター性や世界観を表現するテクニック、そして2次審査に向けて樹林先生が教えてくれたネーム作りのポイントは、今の時代にマンガ家を目指す人にとっては必見です!
1次審査通過者から学ぶ!イラストテクニック
ー1次審査の期間中、課題のイラストを投稿する「ILLUST DAYS」をこまめに拝見していたのですが、樹林先生の仰る通り皆さん本当にレベルが高かったですよね。
樹林:とにかく皆さん絵が上手くて、そのレベルの高さには本当驚きましたよ。非常に迷いながら以下の27作品を選びました。
ー今回選ばれた27作品は具体的にどのような点を評価されたのでしょうか?
樹林:絵が上手いのはもちろんですが、今回選んだ作品はイラストから伝わってくる「キャラクター性」と「世界観」が特に素晴らしかったですね。
ー「キャラクター性」は前回お伺いした”樹林流マンガメソッド”にも登場しましたよね。具体的には”表情のバリエーション”や”目力”のことを指していて、1次審査を通過したイラストからは特に強い目力を感じますね。
樹林:マンガはキャラクターのアップの描写がすごく多いんです。だからこそ、マンガ読者の心を射抜くかのように登場人物の目力がバシっと決まっていることは本当に大切です。マンガの世界で目力は命と言っても過言ではありません。...あれこれお話するよりも、実際のイラストを見ながらお話した方が分かりやすいでしょう! 1次審査を通過したイラストで解説していきますね。
雨宮理真さん
樹林:こちらのイラストですが、まず書類を破りながらこちらを見ている手前の少年に目が行きますよね。少年っぽさと賢さを感じるこの表情、そして奥で寝ている男性……。寝てばかりいるやる気のない元探偵と、探偵に頑張ってほしい世話焼きな助手だということですが、ここから2人のキャラクター性と関係性がすごく伝わってくるんです。きっと、作者の頭の中には既に思い描いている世界観があるんでしょうね。それをこの1枚のイラストで伝えよう!という気持ちが伝わってきました。
ーなるほど。2人のキャラクター性と関係性が伝わるという面ではこちらのイラストも印象的ですよね。
nemutinさん
樹林:そうですね! こちらのイラストも非常に素晴らしかったです。まず、女の子のポーズがとても可愛らしくて、中学生くらいの子が取りそうなリアルなポーズじゃないですか? そして、後ろにいる男性が机に足を乗せてパソコンを開いていますよね。この構図から、その場にいる2人の空気感が伝わってくるんです。全体的にパステルカラーを配置しているところも非常に面白く「この絵は何だろう?」と思わせる不思議な魅力がありました。
ー不思議な魅力といえば、唯一キャラクターが涙を流しているこちらのイラストにはとても惹かれました。
鵙さん
樹林:まさに。真ん中にいるキャラクターが涙を流していて「なぜ泣いているのか?」という理由を知りたくなりますよね。背後にいるキャラクターも魅力的ですしイラスト全体に躍動感があります。イラストなんだけどこの1枚でマンガを描こうしている……そんな強い意識が感じられました。
ー前回、樹林先生が”イラスト審査と言いながらも「マンガ」だと思って描いてほしいです!”と仰っていたのはこういうことだったんですね。
樹林:要するに、1枚のイラストから世界観やストーリー、そして動きが伝わってくるかどうかなんですよね。こちらのイラストも良い例です。
近藤麦さん
樹林:2人のキャラクターがバイクに乗っていて、上の方には2人のもう一つのストーリーが描かれているんですよね。バイクやキャラクターの佇まいからは、デッサン力の高さも感じました。色使いもとっても個性的でユニークですよね!
ー色使いといえば、ダークファンタジー感溢れるこちらのイラストに目が行きますよね。
炉月さん
樹林:このイラストは全体的にダークトーンでまとまっていますが、良く見ると黒・中間色・白のバランスが素晴らしいんですよ。さらに、キャラクターから伝わる表情、イラスト全体感から醸し出す空気感、全てのバランスが良いんです。このセンスの良さを活かせば読者の心を掴むようなマンガが描けると思います。
【樹林先生コメント】
U4 amamimanさん|手の描き方が本当にうまくてデッサン力の高さを感じました。
星月あいかさん|男の子かっこいいのはもちろん、表情がとても魅力的でした。
真宵葉さん|雰囲気作りが抜群に上手!原作に一味違った魅力を添えてくれそう。
nennnneko8さん|キャラクターの髪型、ファッション全てから個性を感じました。
若本雪水さん|もう巻頭カラーの扉絵ですよね!右に描かれている絵からストーリーを感じました。
八水みらさん|繊細な雰囲気を醸し出す線の細さがとても印象的でした。
maeさん|上から見下ろす構図が良く描けていてデッサン力が非常に高いと思いました。
こばやし少女さん|全体的に上手いのと、女の子が可愛い。男子が多く出てくるネーム審査でどう描いてくれるのか楽しみ!
gomakyoさん|バディもの感がすごく漂ってくるイラスト! 髪、表情、全てが個性的で良いですね。
はじめさん|女の子のこのなんとも言えない表情が気に入りました。とてもマンガらしい!
三条尚さん|女の子の可愛らしさはもちろん、車もしっかりと描けていて良い。
天野鈴丸さん|絵柄がとにかくかっこいい!表情のバリエーションに期待です。
nikugasukiさん|原作に合わせて変化させられるような、作者の幅の広さと器用さを感じる。
momonga61さん|書きこみが綺麗。探偵ものと相性が良さそうな絵が描けそうな雰囲気を感じました。
あゆこさん|少女マンガらしいとても可愛らしい絵柄、男の子もすごくかっこいい!
ドスコイさん|アニメのワンシーンを思わせる味わいがある!とても個性的で目を引きました。
drmfpkutaさん|温かみのある絵。猫の設定が面白くて思わず「やるなぁ〜」とうなってしまいました
花戸つき さん|男の子がとってもかっこいい!探偵ものらしい絵柄ももっと見てみたい!
ひのもとめぐる さん|バランス、キャラクターから全てから上手さが伝わってきました。
凡田めぞ さん|男の子と女の子で描き方が全然違うので、絵柄のバリエーションを沢山持っていそう!
まぼ さん|男の子はもちろん、女の子のかっこよさも際立つ印象的な一枚。
土曜と金曜さん|確かなデッサン力を感じました、マンガでどんな表現をするのか楽しみ!
イラスト技術により磨きをかけるなら
ーこうして見ると1次審査を通過したイラストは、表情のバリエーションや目力から生まれる「キャラクター性」そして作者の確固たる「世界観」が感じられますよね。
樹林:まさにその通りなんですが、1次審査を通過された方には2次審査ではイラストの技術や方向性をさらにブラッシュアップして欲しいと思っています。
まず1つ目は、大人の男女も共に楽しめるミステリー作品にふさわしい絵柄にすることです。皆さんとても上手かったのですが「なかよし」の絵柄に合わせて描いたのかな…?と感じるイラストも多く見受けられました。もちろん連載するマンガ誌に絵柄を合わることも大事なのですが、2次審査以降、今回の企画では従来の「なかよし」に寄せすぎる必要はありません。
ー「なかよし」は少女マンガ誌ですが、今回のオーディションによって少女マンガ界を覆すような新たな絵柄が生まれる可能性もあるわけですね!
樹林:楽しみですよね! そして、2つ目はミステリーという作品の特性からくるものですが、とにかく登場人物が多いので老若男女の描き分けを意識してほしいです。
描き分け方としては、髪型や顔の形など色々あると思います。その中でもキリッとした眉毛やトロンとした垂れ目といった「顔のパーツ」そして「配置」に注目してみてください。
練習方法ですが、前回表情を上手く描くには、鏡で自分の表情を見て練習するのが重要という話をしましたよね。描き分けの場合は、かっこいいと思うタレントさんをモデルにして研究すると良いですよ。自分の顔と並べて顔のパーツはどう違うのか……とにかく研究を繰り返してかっこいいと思うパーツを絵に取り込んでいくんです。この練習を重ねることで自然とキャラクターのバリエーションが増えて、スムーズに描き分けができるようになります。
ー確かにミステリー作品となると、事件が起きるたびに野次馬や年配の刑事といった主人公以外の登場人物がたくさん登場しますよね。
樹林:1次審査を通過した方のイラストは可愛らしい絵柄が多かったので、ミステリー作品を描いた時にどのように変化していくのかとても楽しみにしています!
最後は、絵の「上手さ」と「個性」のバランスが釣り合うようにしてほしいと思っています。この2つをバランス良く持ち合わせている人って、なかなかいないんですよね。
ー最後に一番難易度が高いものがきましたね。そもそも「個性」って意識して出せるものなのでしょうか?
樹林:むしろ意識しなければ伸びませんよ。自分のイラストに個性がないと感じるならとことん個性を伸ばしにいく、反対に個性的すぎる場合は、個性だけじゃなく上手さも追求していく……。どちらも意識することで伸びるんです。
個性の出し方は絵のタイプにもよると思いますが、絵柄やキャラクターの表情、髪型で少しずつ出して全体のバランスを見て調整していく方法がおすすめです。
ネーム作りで大切なこと
ー2次審査では、樹林先生が書いた本編プロットの冒頭がいよいよ明らかになるんですよね!その本編プロットから15ページほどのネームを作り、扉絵となるモノクロ原稿を描くというその名も「ネーム審査」。まずは、本編プロットからネームを作るという工程の中で意識すべきことを教えてください。
樹林:本編プロットから読み取った情報を取捨選択することです。強調したいと思ったシーンは「目力」を読者にバシっと向けて”魅せる”ことを意識してほしいです。取捨選択する情報は人によって変わるのが当たり前なので、何を捨てて何を取るのか……個性が出ますよね。
ー特に「冒頭」のネーム作りというところが大きなポイントになると思うのですが、冒頭だからこそ気をつけるべきことはありますか?
樹林:誰が主人公かわかるようにすることです! 例えば、小説だと読者は登場人物や表情、世界観をセリフなどのストーリーから読み取るのですが、マンガ読者はストーリーを読むのは後で、まずはキャラクターを見るんですよね。だからこそ読者に冒頭で主人公の印象を与えることはとても大切なんです。そのためならオリジナル要素が入っても全然構わないですよ。もちろん僕の頭の中にも既にイメージがありますが、それと違うものが出てくることを期待しています!
ー今回樹林先生が書いた本編プロットは探偵バディもの。登場人物はもちろん、セリフも多くなるのでコマ割りに苦戦しそうだと感じたのですが、アドバイスはありますか?
樹林:コマ割りなら『金田一少年の事件簿』のテクニックがすごく参考になりますよ。作画担当のさとうふみやさんは、コマ割りの分かりやすさがピカイチなんです。例えばコマを大きくするところや、場面転換のコマの有無など……なぜそのコマ割りしたのか全て理由を説明できるほど緻密に計算されているんです。ぜひ『金田一少年の事件簿』のコマ割りに着目してみてください。
ーネーム作りはもちろんですが、扉絵となるモノクロ原稿は1次審査の時と違って使用する「色」が限られてしまうので、個性を出すという点で難しい面もありますよね。
樹林:画面構成、そしてモノクロのバランス次第で個性を出すことができますよ! モノクロと言っても、黒、中間色、白の3色が使えますし、どこの配置にそれぞれの色をどれくらい使うのか腕の見せ所ですよね。描き込みすぎてもごちゃごちゃしていても読みにくいし、反対にシンプルすぎても拍子抜けしてしまう……。この全体のバランスをぜひ見たいですね!
(ライター・ちゃんめい)
樹林 伸
漫画原作者・小説家・脚本家。
漫画編集者として『シュート!』・『GTO』などに携わる。
原作者として『金田一少年の事件簿』・『BLOODY MONDAY』・『サイコメトラーEIJI』など大ヒット作を多数手がける。
MANGA オーディション〜樹林伸プロデュース〜
優勝者に樹林伸原作の女性向けミステリー漫画の連載を担当してもらうオーディション企画。
「なかよし」・「パルシィ」内で連載&単行本化確約。
◆第2次審査 5月21日(金)まで (2次審査からの飛び入り参加枠あり )
課題:ネーム審査
樹林伸先生制作の1話冒頭プロットを読んで、約15Pネーム・扉(1色原稿)を制作。
◆コンテスト詳細はこちら