2000字書評コンテスト 『講談社文芸文庫』結果発表

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NOVEL DAYS × tree

2000字書評コンテスト 「講談社文芸文庫」

結果発表

 

 

受賞作

 

書評『戦後短篇小説再発見』全18巻

savensatow

対象作品は「戦後」をテーマにしたアンソロジーのシリーズですが、同様のアンソロジーが世の中に数多くある中で、本シリーズがどのような特異性や意義を持つのかが極めて明快に述べられています。
また、評者の文章力が非常に高く、まるで大学の文学論の講義のように、客観的で説得力を感じました。
この書評を読んでから読むのと、そうでないのとでは、本シリーズに含まれる各作品の味わい方に大きな差が出てくるのではないでしょうか。

 


行ったり来たり——藤枝静男の「白柘榴」(『志賀直哉・天皇・中野重治』所収)
ふじみみのり

まず書評対象として選ばれたのが、表題作にもなっていない「白柘榴」という知られざる小品というところに独自の着眼点と本物の熱意を感じました。
未読の読者にも伝わるように内容を紹介しつつ、作品の骨子からこれでもかとばかりに深い洞察を展開し、評者がこの作品を好きで、十二分に味わい尽くしている感がよく出ています。
こちらは主観がよく生かされた、評者と読者がともに読み解いていく愉しみを共有するようたタイプの優れた書評でした。

 

 

全体講評

今回も多数の書評をお寄せいただき、ありがとうございました。
おかげさまで、今回は過去最多の応募数となりました。
バラエティに富んだ作品ラインナップを誇る講談社文芸文庫から、好きな作品を選んで書評を書いていただくかたちでしたが、作品選びの段階から非常に個性や好みが感じられ、興味深く読ませていただきました。
作品に対する熱意や思い入れが、文体や言葉の端々から伝わってくる作品が多く、読んでいて圧倒されました。
読者のみなさんも各書評を読んで興味のひかれる作品が見つかりましたら、ぜひ対象作品の方にも手を伸ばしていただけますと幸いです。
(電子化されている作品も多くなっていますので、紙で見つからないときは、電子書店でもぜひ検索してみてください!)

 

 

優秀作品

惜しくも受賞には至りませんでしたが、ぜひとも読んでほしい作品を紹介します。

 

書評・井伏鱒二『夜ふけと梅の花・山椒魚』 ~「山椒魚」の魅力について~ 

加藤雄三 

教科書などで若い頃に読んだことがある人も多いであろう「山椒魚」を、いま改めて読むことで、多数の発見があり、別の味わい方ができるということを実例とともに示しています。
教科書作品を再読したいと思わされます。

 

わが戸板康二 ー書評『思い出す顔 戸板康二メモワール選』ー 

浜辺さとる

熱量という意味では、今回の応募作でも一、二を争う水準にありました。
全編を通して戸板康二という書き手のことを知ってほしいという情熱にあふれています。
これだけ熱く薦められてしまうと、読みたくなってしまいますね。

 

あなたは倉橋由美子を知っているか?毒薬としての文学。 

野葛間

こちらは倉橋由美子という作家の魅力を、いくつもの切り口から紹介しています。
軽妙な文体が大きな魅力の作家ですので、引用を多用する手法は大正解ですね。