2000字書評コンテスト 『小説現代 2020年11月号』結果発表

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NOVEL DAYS × tree

2000字書評コンテスト「小説現代 2020年11月号」

結果発表!!

 

 

受賞作

 

眉村卓 遺作『その果てを知らず』書評

佐久田和季

収録作品のひとつ「その果てを知らず」(眉村卓)についての評です。

著者の遺作であり、かつ自叙伝の色濃い当作の独特の位置づけから、作品の構成に従った各パートの解説が続き、最後に全体を通した印象が語られるという構成で、とてもまとまりがよく読みやすかったです。

評者の視点を通して見た対象作品の魅力と、評者自身の興奮が伝わってきました。

評者の背景知識や読解力によって対象作品に補助線が引かれることで、読む人に新たな発見を与えるすぐれた書評であり、さらには評者自身の作品や作者への愛も強く伝わってくる、気持ちのいい書評でもありました。


 

全体講評

たくさんのご応募、ありがとうございました!

今回の書評コンテストのために「小説現代」を買ってくださった方もいらっしゃったようで、大変ありがたく思っております。

今回は前回までと違い、複数の作品が掲載されている「小説現代」がテーマということで、書評の作品選びにも個性が感じられ、興味深く読ませていただきました。

単行本と違って小説誌にはあまり馴染みのない方も多いと思いますが、そんな方々を意識して表紙やコラム欄の「手に取りやすさ」に注目した書評もありました。また、読者が作品をより楽しめるような著者にまつわる小ネタの紹介をしている書評も見られました。

今回は、「小説現代」全体でも個別作品でも構わないというかたちにしましたので、いつにも増して多様な書評が集まりましたので、書評を書く方も他の方の作品に目を通していただくことで、ご自身の書評力の向上にお役立ていただけるのではないかと思います。

そして読者の方には、小説誌を読み慣れている方はもちろん、あまり読んだことのない方も、本コンテストの応募作から、「小説現代」に興味を持っていただき、新たな豊穣なる世界の扉を開いていただけると、望外の喜びです。


 

優秀作品

惜しくも受賞には至りませんでしたが、ぜひとも読んでほしい作品を紹介します。

 

語り手と目が合う物語 (一穂ミチ「ピクニック」書評)

飾花 蒔絵

収録作品のひとつ「ピクニック」(一穂ミチ)についての評です。

対象作品の全体的な雰囲気やストーリーの概略、そして作品の見所を、読み方の手がかりを交えながらわかりやすく伝えており、作品が読みたくなる書評に仕上がっています。

 

わたしが小説誌を読む理由

川勢 七輝

「小説現代2020年11月号」全体を見渡す評です。

小説誌ならではの魅力を、自身の視点に引きつけて紹介しています。

特にこれまであまり小説誌を読んでこなかった読者の興味を引くように工夫の凝らされた書評でした。

 

幕末のテクノクラート

あおぞらつばめ

収録作品のひとつ「天を測る」(今野敏)についての評です。

近年の歴史ものというジャンルの面白さ、さらにその中でのこの作品の面白さが具体的な資料や人名まで拾いながら丁寧に紹介されており、知的好奇心を的確に刺激する書評になっていました。