作品数4
総合評価数144
総合PV数41,126

作者ブックマーク

ファンレター

  • 『三日月は困ってしまった』

    恋愛に陥ってしまったときの気持ちの反芻と手遅れ感が、絶望的でありながら蜜のようです。足元をすくうような不幸は、時として今まで考えなかったことを突きつけてきて、ある意味人生に深みをもたらすものかもしれないな、などと感じました。

  • 『酸っぱい林檎の使い途』

    酸っぱい林檎になぞらえて、傷つけ合いながらも依存し合うくだりの筆致に、琴線が震わされまくりました。そして姉の瞳が翳ったシーンを何度も反芻する部分。毎回構造や展開に意表を突かれ、深い読後感を味わっています。

  • 『鈴木はこの時』読後に

    思うところあって調べ物をして、『円環的因果律』という言葉を知りました。主人公を乗せた電車は人生の終わりに向かって直線的に進行するのではなく、現在・過去・未来包括して物語は円環的に進行していったので。単純に原因ー結果を結びつける直接的因果律には囚われるべきではないのだと語りかけてくる。主人公は孤立しているように見えて世界と関わり合っている。すべての人の関係性の中に存在しているとも言える。いつも容易に共時的な全体構造が把握できるのは、作者の透徹な視点の高さによるものと感じます。

  • 『だがハッピーエンドを望むことの何が悪いのだ?』

    私は若い頃、『現実はそれ相応の実質しか示さない』ということが腑に落ちて(何かで読んだのかもしれない)、それが自分の手順書となりました。都合の悪いアクシデントが起きれば「まぁ仕方ない、そういうものだ」と手順書になぞらえて処理。私は魔法の本をそれ以外に探さなかったのです。慣れた方が居心地がいいのは実感します、例えそれが不幸だとしても。私はタイトルを拝借して、少し自分の手順書を書き換えようかと考え口元がほころびました。しかし、この小説を楽しむことができる自分に至ったのは上出来とも思うのです。読んでいる ... 続きを見る

  • メタファー、深読みの贅沢な時間

    知っている登場人物が出てきて楽しい、テンポのいい過不足のない言葉が音楽のように綴られ気持ちいいと味わっていたところを、4のラストで急転直下。思うに、善人で誰からも好かれていた頃のフェリスィテは、あまりにも自分を意識の浅い層というか、単層的な世界に身を置いて感情をないがしろにしていたのではないだろうか。そして自分の中に潜む悪魔(=影)、王、道化から復讐めいたことをされてしまう。単層的な世界では、王も道化も攻撃的になるのだ。しかし6でフェリスィテは、多層的な世界にたどり着き微かな光が差し込んでくる。 ... 続きを見る

  • 読み終わるのが惜しかった

    いつもまずは「こういう小説好きだ」という主観の波に襲われる。その波に暫し浸り、それから主観を客観に翻訳する作業をするのですが、中々に難航します。今回、世界や物事は複雑な争点があるのに、善/悪、益/害と単純に割り切ってわかりやすく提示することの魅力と、その危うさがテーマでした。でもいつもラストに救いがある。価値観を変えていけば世界は変わるということ。そしてわかりやすい対立に流されずに正気を保つ主人公の誠実な暮らしぶり。こうざっくり書いてしまったけど、実際の「オニオンスープの中から」は幾層にも奥行き ... 続きを見る

  • いつも

    いつもファンレター、ご感想、本当にありがとうございます。読んでくださること、感想を書いてくださることに心から感謝しています。支えになっています。 矢島

  • いつも

    いつもファンレター、ご感想、本当にありがとうございます。読んでくださること、感想を書いてくださることに心から感謝しています。支えになっています。 矢島

  • テイストが違う、これも新鮮

    効率よく面倒ごとを避け続けるうちに脆弱になる精神。死後に残される運命の借金。ずっと寄り添っていたジョワはパルフェの魂の一部か。パルフェが俗にまみれていたときには忘れ去られていたジョワが、死を目前にして寄り添い泣いてくれるラストシーン。確かに読み返すと32歳のハプニングまみれのパルフェはとてもチャーミングだ。価値観の洗い替え。何が起こるかわからないのは恐いけど、自分なりに腹を据えて対応していくしかないのだなぁと考えたりして、今週も有意義でした。

  • トリプルミーニングか……

    身につまされる。私も堂々巡りの解釈ばかり繰り返してきた。多分今も。ファンレターは語彙力の無さも含めて自分が浮き彫りになるから恥ずかしい。突き詰めて意味や答えを追い求め、視点を変え、最後には原稿用紙と万年筆を手放して静寂が訪れるラストシーン、昔読んだ『十牛図』を想起した。世界は素っ気ないようでいて、自分のあずかり知らぬ所で慈しみに裏打ちされているということを毎回行間から感じます。解釈違いだったらすみません。

  • 「ハイリヒトゥーム」これもよかった

    最初”15千文字”と見て(自分にとっては)長いなと。でも一度物語の中に入ったら出られなくなった。物語が軽やかに時空を越えて展開し出して、これどうやって収拾つけるのかと途中頭の片隅で思ったけど、見事にソフトランディング。物語自体が眩しくきらめきながら。

  • 良質のSF映画を読んでいるよう

    「ポラリス」この話も好き。何度も立ち戻って読み返した。立ちこめる焦燥感と閉塞感から一転して、軽やかに解放されるラストが染みる。パンチラインがサラッと書いてあるから気が抜けない。……ファンレター書くのってムズいな。

  • まるでカート・ヴォネガット・ジュニアのような

    何気なく開いて『読みかけの本の結末だけが少し気になったが』を読んで驚愕しました。 昔読んだ海外SFのよう、乾いたユーモアと諦観と行間から滲み出る切なさ。陳腐な感情表現抜きで淡々としていながらギュッと心臓を掴みにくるような。私は集中力無くて長い文章読めないんですが、これは一気に読んでしまいました。