世界で最初に生まれた男は、伴侶と一緒に禁断の木の実を食べて楽園を追放されたという。
結局、それが人間の愛なのか？
伴侶を一人で追放させず、共に楽園を追われた、そのことが。

地球人たちが信じた神は、罪に赦しを与える神だという。
だがこうは思わないか？
俺たちがしばしば必要とする神は、一緒に罪を犯してくれる神だ、と。

俺はミスリル。鉱山街の暗殺者。惑星アースフィアの孤児で、殺し屋として育てられた。罪を犯すのが仕事みたいなもので、今は星獣兵器の開発者たちの血で手を汚している最中だ。
組織の命令じゃない。もう誰も俺に命令しない。俺を育てた師や兄弟たちとは決別した。じきに追手が来る。

とはいえ一人じゃない。
仲間が俺と一緒に罪を犯してくれている。
果たしてこれが愛なのか？
わかる時が来るのか？

目を閉じる。
鬨の声が聞こえる。
目を開ける。
炎が見える。
汚れた地上を涙の河が裂いていく。

楽園を追われた人間に、神は大地を与えた。
俺たちは地上で何を創れる？

『〈アースフィアの戦記〉月ニ憑カレタ歌語リ』、明日4月24日から連載再開だ。

アースフィアで会おう。

2020年 04月23日 (木) 20:36｜コメント（0）