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活動報告

戯論と『虚空蔵求聞持法』

戯論(けろん)は仏教語で「無意味で無益な言論」を意味します。
私はもう少し現実的に「真実心の伴わない言葉」として、この語を用いて自らを戒めてきました。
ところが、最近ある作家さんの作品に向けたファンレターに、その戯論=真実心を伴わない言葉を書いてしまいました。現実世界であれば自分が絶対口にしないような言葉を調子に乗って文字にしてしまったのです。
幸い、相手の方が削除してくださったので今は読めませんが。
実は昨日から連載を予定していたチャットノベルがありました。
それは、妄想キャラクター男女三人のちょいエロ対談です。そういうタイプのものを書く方は他に沢山いるでしょうし、実に私らしくない内容。初めて挑戦したチャットノベルも、おバカな話でスタートした筈なのに、最後は大乗仏教の菩薩行でまとめてしまったくらいですから。
ではなぜそんなものを書こうと思ったかというと、もっとウケたいという願望(野心?)があったからだと思います。そして、そのチャットノベルを書いているうちに、私の理性は戯論に打ち負かされてしまいました。
ご迷惑をおかけした方にはお詫びの言葉もありませんが、ファンレターの失敗は、自分がなんのために小説を書くのかを再考する良いきっかけになりました。
小説は、想像や妄想が生み出す創作物ですから、そこに何らかの真実を見いだせなければ単なる戯論になってしまいます。もちろん、ちょいエロだって、おバカなお笑いだって、人を楽しませることが出来ればそれは真実になります。でも、自分はそういうタイプのものに向かないことを改めて自覚しました。
昨日、ちょいエロ対談のテキストを破棄した直後、頭に浮かんだのは長編小説用に温めていた女子高生が高僧に転生するアイディアでした。書きかけだった長編の導入部をベースに、短編として二時間半で書き上げ、昨夜のうちに2000字転生コンテスト応募作として公開させていただくことができました。
自分で招いた禍=失敗が『虚空蔵求聞持法』を生み出した……などと大袈裟に言うほどたいした作品ではありませんが、文字通り転禍為福です。
出来不出来の評価は読者の皆さんにお任せするとして、『Ai needs Yu』『課長島村耕作の憂鬱』『アリゾナの涙』と並んで、とても自分らしい小説が書けたと思います。

2020年 11月24日 (火) 12:18|コメント(0)

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