活動報告
後焼きの日。
犬を連れた老婆。
「火がつきましたね。本焼きが雨だったから、今日が後焼きの日でしたのね。」
呼び止められた格好になったが、この声掛けが初めての会話であった。
「この川堤から山焼きを見るのは初めてです。」
散歩中のゴマ塩ニシンは呼びかけに応じた。
偶然にしては以前からの知り合いのように二人の老人は並んで燃え上がる山を眺めた。
何か、幼い時からの知り合い、いや恋人同士のように思えた。
何も言うこともなく、ゴマ塩は空想を胸の中で広げていた。
「それでは失礼いたします。後焼きが見えて本当によかった。」
こう言って、老婆は犬に引っ張られるように坂道を降りて行った。
ゴマ塩は黙って見送っていたが、散歩道で出会う人だから、また、近々に出合うだろうと思った。数日後、犬を連れた老人とすれ違った時、あの犬は老婆の犬ではなかったと気づいた。
また、数日後、同じ犬を連れた若い娘と出会った。
どうしたのだろう。どうして老婆が犬をつれていないのだろう。
あれから、ちょうど一年が経過した。
不思議なことに、あの後の山焼きの日を最後に老婆に出合えなくなった。
どうしたのか、今日も散歩に出て、犬を連れた老婆のことを思い出した。
2016年 12月25日 (日) 18:35|コメント(0)
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