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活動報告

秘密実験。

 宇宙旅行元年の月一周ツアーに参加して僕が密かに実験した話である。
 機内アナウンス。
「美しい地球を後にして、宇宙船は現在、月に向かって推進しています。この後、月を1周してから地球に
帰還する予定です。今まで見ることのできなかった月面の裏側をしっかりと観察できますから、記念写真を撮りたい方は月をバックに撮影して下さい。気分の悪くなられた方がありましたら、緊急ボタンを押してください。」
 僕はアナウンスを背中で聞きながらトイレに急いだ。個人的に実験しておきたいことがあったからだ。それは自分の精液が無重力の宇宙空間でどのようになるかということであった。創造するに無数の精子が無重量の状態では分離して、無数の球体になるのではないかと想像している。一個の精子が独立して球状になっている姿を想定していたから、これが事実かどうか、自分の目で確かめたかった。
 ところがトイレの中では思ったほど順調に運ばなかった。いくら空想を刺激してみても興奮してこない。恋人の顔や裸の姿を思い浮かべても、何の効果もなかった。別れた以前の妻のことも思い出してみたが、効き目がなかった。思い切って、宇宙旅行に出発する際に見送りに来てくれたスナックのバーテンをしているキリタンポ君の童顔を想像してみたが、僕の息子は何の変化も見せなかった。江戸時代の枕絵を脳裏に呼び込んで見たが、僕の息子は返事もしてくれない。この時、ドアをノックされた。誰かトイレの順番を待っている。ひょっとすれば、僕と同じ趣味の野郎かもしれない。仕方なく、思いを遂げられないままドアを開けた。目の前に美女が立っていた。
「いかがでしたか。」と女性に言われて、僕の息子はビックリ仰天して起立してしまった。

2016年 12月31日 (土) 13:10|コメント(0)

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